手をかければかけるほど、良いパンが焼けると思ってた。 でも違った。

捨てないパン屋「手を抜く」
手を抜くことによって、
僕も喜び、
お客も喜び、
そして、
パンは残らなくなった。
「僕は手抜きしてパンを作ります。
そのかわり、
材料は入手できるベストを使います。」
と公言しています。
6年前くらい、
菓子パンを無くしたとはいえ、
数十種類のパンを作っていた頃、
スタッフは最大8名いました。
今より売上はありました。
けれど、
売っても売ってもお金は残らない。
みんな働きまくって頑張ってるから、
ちゃんと給料払ってあげたい。
だったらもっともっと売らないと。
どんどん焼く。
売れるときは売れる。
でも、
残るときは、
どんどん残る。
残るパンにショックを受ける。
がむしゃらに頑張る。
だんだん疲れてくる。
余裕がなくなる。
優しくなくなる。
大切な身近な人にあたってしまう。
俺ってだめだな。と思う。
という状態になっていました。
転機は3年前、
オーストリアのパン屋での研修でした。
朝8時に行って、
お昼に仕事が終わってしまったのです。
労働時間4時間。。
手抜き。
しかし、
そのパンは日本のどのパンよりも断然に美味しい。
おれは、18時間も寝ずに働いて、
いろんな人に迷惑かけて、
出来るパンは、
ここよりまずい。
何やってたんだろう。。
日本にいた頃は、気づけなかった。
手をかければかけるほど、良いパンが焼けると思ってた。
でも違った。
手をかけて、B級の材料を使うより
手を抜いて、最高級の材料を使うほうが、
断然美味しくて、作るのも楽で、値段も安い。
そして、これは、
パン屋だけでなく、
他の仕事にも共通するのかもしれないぞ。
だったら、
まず自分の店で証明するべし。
と思ったのです。
そして、
帰国してお店を再開する時に、
手抜き宣言をしたのです。
種類は4種類、
具は入ってない、
そして大きいパンだけ。
だから結構な量を焼いても、
作るのは僕一人、
適当に捏ねて、どかっと丸めて、
4時?11時で仕事を終えて家に帰ります。
そして、
12時-18時で、
奥さんが店頭で売ります。
種類も、製法も、売り方も、営業時間も、
手を抜いています。
でもそのかわり、材料はベストのものです。
粉は国産の有機栽培のもの、
有機がなければ減農薬のものをつかいます。
薪窯や自家製酵母の使用も材料の一部と考えてのこと。
もちろん材料代は倍以上に高いです。
でもそれでも、
手間ひまかけて、
人手もかけて作るより、
はるかに安く作れます。
お客は、
良い材料の美味しいパンを食べられます。
しかも、
安い。
パンは売れ残りにくくなりました。
そしてそれは、
お客さんも、
作りても、
農家さんも、
その周りの人も、
みんなを喜ばせる方法だったのです。
ーーー
モンゴル人の友人がうちにホームステイしていて、
その子が、
「パン捨てるのはおかしい」
「安売りすれば?誰かにあげれば、?」と言いました。
食中毒にうるさい現代、
残った菓子パンを、次の日売るとか、だれかにあげることはできない。
だったら、菓子パンはやめるしかない。
あんパン食べたかったら、
自分で餡子をはさんでもらえばいい。
そう、自分に言い聞かせてやめた。
僕は何億円パンを売ろうとも、
ドカドカパンを捨てるのであれば、
何の価値もないと思う。
今まではしょうがなかったかもしれないけど、
今からはほんとうに許されない。
時代がかわったのだから。
中川さんの粉カムホを使った時。
「売れ残ったら、全部送ってください。買いますから。」
と言われた。
農家さんがどれだけ思いを込めて、
我が子のように麦を育てているのか、
わかってたつもりだったけど、
わかってなかったかもしれない。
海外の粉をドカドカ使っていたら、
こんなこと一生わからなかった。
ネット店もありがたいです。
予約だから当然捨てません。
が、ネットはけっこう上がり下がりがあります。
そこで、定期購入がはじまりました。
定期のお客様、今は100人です。
もしこれが1000人であれば、
例えば、
店売りやめても、豊かに暮らしていけます。
パンを1つも捨てることなくです。
ということは、
一億人に嫌われても、
1000人のお客様の為に全力でいいもの焼けば、
暮らしていける時代が、
もう来ています。
買う方も売る方もそれでいいと思います。
マスコミの時代も終わり、
みんなが一緒の時代ではなくなったのですから。
捨てないパン屋を目指すには、
ありがたい時代です。