第二世代抗精神病薬

第二世代抗精神病薬

第二世代抗精神病薬 SDA Serotonin Dopamine Antagonist リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ルーラン、エビリファイ、クロザピン、非定型薬

統合失調症治療に用いられる新世代薬をまとめてSDAと呼び、非定型薬または第二世代抗精神病薬とも呼ぶ。抗精神病薬と向精神薬は抗、向の漢字が区別して用いられるので注意。ハロペリドール(セレネース)やクロルプロマジン(コントミン)など従来薬を定型薬または第一世代抗精神病薬と呼ぶのに対し、1990年頃から統合失調症治療に使われ始めた一群の薬をさす。薬理学的な定義ではない。米国ではクロザピンが最初であり、日本では現在リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ルーラン、エビリファイが認可されている。セロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト仮説に基づき、統合失調症において

  • 陽性症状(ないはずのものがある)については従来薬と同等以上である。
  • 陰性症状(あるはずのものがない)については従来薬にはない効果を発揮する。
  • 副作用が少ない。
  • 認知障害(現実と脳内想念を区別する能力の障害)を改善する。

以上のように評価されている。現状ではすでに統合失調症における第一選択薬であり、その点で非定型薬との名称はふさわしくない。またセロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト仮説については薬理学的に批判検討されつつあり、SDAの名称もふさわしくない。第二世代抗精神病薬と呼ぶのが良いと考えられる。ゾテピン(ロドピン)に関しては日本で開発され、ヨーロッパやアジアでは第二世代抗精神病薬として扱われているが、日本では第一世代抗精神病薬と考えられている。

利点

開発の端緒となったクロザピンは

  • 錐体外路症状が少ない(つまり震えが少ない)。
  • 高プロラクチン血症が少ない(つまり女性において生理が乱れない)。
  • 陰性症状に有効(つまり意欲低下や感情平板化が起こらない)。

この三点が特徴とされた。リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ルーランの四剤の使い分けについてもこれらの特徴を重視して選択している。錐体外路症状と高プロラクチン血症は患者さんが服薬中止する大きな動機であったことから治療面では確実な前進であった。また統合失調症治療における今後の課題は陰性症状の克服と入院期間短縮、日常生活の維持であることから、デイケア、SSTとともに第二世代抗精神病薬に期待が寄せられた。

その他の使い方

臨床場面では老齢期認知障害の現実検討能力の改善に有効、非常に強い不安の場合に有効など、統合失調症以外の場面でも工夫の余地がある。パーキンソン病の場合に精神症状を伴うことがあり、錐体外路症状が出にくい第二世代抗精神病薬がやはり有効であることが知られている。

ジプレキサザイディス

ジプレキサザイディスはジプレキサの口腔内速崩錠である。従来の速崩錠よりも抜群に速崩である。砕けやすいのでパッケージから出すときも注意を要する。いろいろな応用が考えられるだろうが、画期的だと思う。陽性症状とともに陰性症状を最初からターゲットにするならジプレキサザイディスから始める。

リスパダール液分包 1ml 2ml

使い切り目薬に似た包装になっている。これもとても使いやすい。ジプレキサザイディスよりも扱いは楽である。陽性症状を抑えるにはこれが第一選択となるだろう。認知機能改善もジプレキサザイディスよりも優れていると感じる。

セロクエル

リスパダール液は即効性があり、副作用も少ないが、プロラクチンを介して生理周期に影響を与える。セロクエルはそれが少ない。ドーパミンレセプターを常時占有するのではなく、「くっついたり離れたり」しているようで、アップレギュレーションが起こりにくいのではないかと議論されている。本当にアップレギュレーションが起こりにくいなら、デイケアなどで治療している人には第一選択である。画期的な薬剤である。

ルーラン

国産品である。何となく低容量のみを使い、効きが悪いと感じている人が多いのではないか。用量を増やしてみれば、効果が分かる。ルーランでなければだめという患者さんもいる。患者さんのどのような体質と関係しているのかまだはっきりしないが、これもいい薬。