作家には旬がある

残念だけど、作家には旬があると僕は思います。
 でも作家というのは、ヒットすればするほど作る環境が整ってきて、発言力が増えていって、引退時期を見失ってしまうんです。
 それに、日本では作家が自分のことを作家とは思いたがらない。「自分は作家先生なんていう偉い存在じゃない。生涯いち職人だ」と考える人が多いんですよ。これは、日本人特有の謙遜と勤勉の美徳だと思うんですけど、ますます引退しないんですね。
 手塚治虫さんも、病室で最期まで原稿描いていました。
 これは美談であると同時に、一種の呪いなんですよ。漫画家としてデビューしちゃったら、仕事がなくなるまで描いてなきゃいけないし、仕事がなくなる事が死ぬより怖い。
 これがあらゆる漫画家が持ってる感性なんです。大ヒットを出したら引退して、優雅に印税生活なんて考えている現役漫画家は、一人もいないんですよ。
 今より少しだけ暇になりたいと思っている漫画家はいます。