手はつなぐ

家を出ると、子どもが、手を伸ばしてくる。
「手をつなぐ」のが当たり前なのだ。
手をつないで歩いて幼稚園に行くものだと、子どもの中では決まっているのだ。
しかし、日本で大人になってだいぶ経つ僕は、知っている。
「手をつなぐ」ことが、どれだけ特別なことか。
手をつなげる人が、いかに少ないことか。
ましてや、なんの気遣いもなく、親密さを示す必要すらなく、当たり前のように手を伸ばしただけでつなげる人は、その中でもさらに、いかに少ないことか。
この小さな生き物が、全幅の信頼を寄せて、毎朝手をつないで歩いてくれたことを、しみじみとありがたく思う。
ありがとう、ありがとうね。
「手はつなぐもんだ」