徒然草44段:あやしの竹の編戸の内より、いと若き男の、月影に色あひさだかならねど、つややかなる狩衣(かりぎぬ)に濃き指貫(さしぬき)、いとゆゑづきたるさまにて、ささやかなる童ひとりを具して、遥かなる田の中の細道を、稲葉の露にそぼちつつ分け行くほど、笛をえならず吹きすさびたる、あはれと聞き知るべき人もあらじと思ふに、行かん方知らまほしくて、見送りつつ行けば、笛を吹き止みて、山のきはに惣門(そうもん)のある内に入りぬ。榻(しじ)に立てたる車の見ゆるも、都よりは目止まる心地して、下人(しもうど)に問へば、「しか
徒然草44段:あやしの竹の編戸の内より、いと若き男の、月影に色あひさだかならねど、つややかなる狩衣(かりぎぬ)に濃き指貫(さしぬき)、いとゆゑづきたるさまにて、ささやかなる童ひとりを具して、遥かなる田の中の細道を、稲葉の露にそぼちつつ分け行...