ギリシャ危機、真の病巣は「バラマキ年金」にあり
ギリシャの手厚い年金。高齢者に飴を配り、国民の意を迎えようとする政治の連続が、国を破綻の縁に追い込んだ。
現役世代の所得の8割を得られる年金
ギリシャ問題の発端は2009年秋、ギリシャの名目GDP(国内総生産)比の財政赤字が、それまで公表していた3.7%ではなく、12.5%(その後13.6%に修正)であると発覚した事にある。ユーロに加盟するには、財政赤字を3%以内、公的債務残高を同じくGDP比で60%以内に抑える必要があるが、それをごまかしていたのである。
一国の政府が最重要な財政の数字を偽装していた
公的年金の赤字が大きすぎるのである。2000年代には「年金の赤字がGDPの9%に達したこともある」
GDPの9%といえば、日本なら約45兆円。ほぼ税収に匹敵する規模の赤字といえばわかりやすい
年金額は約11万円(月額)だが、現役世代の所得の何%に当たるかを見る所得代替率では79.6%にも達する。ドイツの55.3%、スウェーデン55.3%、米国44.8%を遙かに凌ぎ、フランスの71.4%をも超えている。ちなみに日本は40.8%だが、これは2004年の年金改革が完全実施された後の水準で、それが済んでいない今は約48%程度と見られる。
しかも、ギリシャの場合は早期退職者が多い。51~55歳で公務員の23.6%、民間の12.8%が退職し、56~61歳では同じく公務員が43.5%、民間は58.6%が引退するという。
財政危機の表面化以後、公務員の勧奨退職が増えたことも押し上げ要因にはなっているが、早期退職の多い構造は以前からのもの。現役世代の減少は、保険料負担力の縮小だから年金財政はますます悪化する。当然、経済の支え手が減ることになるから景気もさらに低迷する。
年金がここまで肥大化した背景には、1960年代後半から70年代前半の軍事政権から文民政権に戻った後、国民の支持をつなぎ止めるために、歴代政権がばらまきを続けたことがあるといわれる。
立ちゆかない財政を破綻させないために、IMF、EU、ECBは2度に渡って支援をしてきた。その第1次が2010年5月の約700億ユーロ(9兆5200億円)、次いで2012年2月からの第2次が約1700億ユーロ(23兆1200億円)だった。この第2次支援の期限が6月末で、それが延長されなかった。だから、ギリシャは第2次支援の残り72億ユーロ(9792億円)の融資を受けられず、デフォルトにも等しいような債務延滞となった