“サイコパスの研究を専門にしていた神経科学者のジェームズ・ファロンは、あるとき自身の先祖に7人もの殺人者がいたことを知った。そのなかには、1892年に父親と継母を斧で惨殺した疑いを持たれたリジー・ボーデンもいた。  そこで、ファロンは現在の自分の家族や親族のサイコパシー傾向を調べるため、脳スキャンの検証を始めた。ほとんどは何も問題がなかったが、なかに1点、倫理的・道徳的な行動と関係があるとされる脳の眼窩前頭皮質の活動が明らかに低く、完全にサイコパスの脳と思われるものがあった。実はそれこそが、ファロン自身の

“サイコパスの研究を専門にしていた神経科学者のジェームズ・ファロンは、あるとき自身の先祖に7人もの殺人者がいたことを知った。そのなかには、1892年に父親と継母を斧で惨殺した疑いを持たれたリジー・ボーデンもいた。  そこで、ファロンは現在の自分の家族や親族のサイコパシー傾向を調べるため、脳スキャンの検証を始めた。ほとんどは何も問題がなかったが、なかに1点、倫理的・道徳的な行動と関係があるとされる脳の眼窩前頭皮質の活動が明らかに低く、完全にサイコパスの脳と思われるものがあった。実はそれこそが、ファロン自身の脳スキャンだったのだ。  ファロンは自身を「向社会的(反社会的の逆の意)サイコパス」と呼ぶ。ファロンは、確かに人を操ろうとする傾向があり、競争心が強いことを認めている。また、実の孫娘でも赤の他人でも同じ程度にしか思えないという共感能力の欠如も自覚しているという。しかし一方で、社会の善良な一員として日々暮らしているという自負もある。ファロンは、自分が犯罪者ではなく科学者になったのは、優しい両親に十分な愛情を注がれ、健全な環境で育ったことが大きいだろうと話している。”