運動に寿命を延長する効果があることは、これまでの研究で明らかにされている。デンマーク・Frederiksberg HospitalのPeter Schnohr氏らは「坐位中心の生活で運動不足の人に比べて、スポーツを行っている人は平均余命が長く、特にテニスをしている人では9.7年も長かった」とMayo Clin Proc(2018年9月4日オンライン版)に発表した。水泳やランニングなどの個人スポーツより、特にテニスやサッカーなどのソーシャルスポーツ(他人と行うスポーツ)で長寿の傾向が見られたという。
8,500例超を25年追跡し全死亡率を検討
Schnohr氏らは、スポーツに参加することと平均余命の関連について評価するため、デンマークの大規模コホート研究、コペンハーゲン市心臓研究(CCHS)の参加者のうち8,577例について、1991年10月または1994年9月から2017年3月まで約25年間追跡し、全死因死亡率を検討した。CCHSでは、さまざまな種類のスポーツや余暇の運動などに関する詳細なアンケートが行われた。
その結果、坐位中心で運動不足の人と比べた定期的にスポーツ(8種類)を行っている人における平均余命(多変量調整後)は、テニスが最も長く9.7年。次いでバドミントン6.2年、サッカー4.7年、サイクリング3.7年、水泳3.4年、ジョギング3.2年、健康体操3.1年、スポーツジムでの運動1.5年であった。
同氏らは「今回の研究から、いずれのスポーツも平均余命の著明な改善と関連していることが分かった。しかし、これは観察研究のため両者の関連が因果関係であるかどうかは不明」と述べ、「興味深いことに、個人スポーツよりソーシャルスポーツ(チームスポーツ含む)の方がより長寿と関連していた」と説明している。
インターバルトレーニングの効果か
この研究に参加していない米・Mayo Clinicスポーツ医学のEdward R. Laskowski氏は、長寿傾向を示したソーシャルスポーツの中でも、テニスやバドミントンなどのラケットスポーツが最も平均余命を延長していることに着目。その理由について、「ラケットスポーツが”インターバルトレーニング”(不完全な回復を挟んで運動を繰り返すトレーニング)に当てはまるからではないか」と考察している。
同氏は「例えばテニスでは、1ポイントのプレーにおいて30秒間非常に激しい運動をした後に、次のポイントプレーまでに不完全回復時間を持つことができる。そのようなインターバルトレーニングは身体機能の強化において非常に効率的であることが知られており、実際に効果を上げている」と述べている。
しかし、同氏は「水泳やランニングなどの個人スポーツを行っている人であれば、それらを続ければよい。スポーツをしない人に比べて長生きできる。ただし、テニスなどのラケットスポーツを始めるなら、もっと長生きできる可能性がある」と指摘している。