“「足がつりやすい」と患者さんが仰る。「寝ている時とか、明け方ですか?」と私が聞くと、そうだと仰います。「つる」=筋肉の痙攣ですけれど、ご老人の場合運動しすぎた夜に起きることが多いようです。疲労は関係あるだろうと。それから筋肉の量が落ちたときにも起きやすいようです。もともとヒョロヒョロの人には無縁な症状みたい。電解質も少し関係あるだろうと。だから脱水なども良くないだろう。それで芍薬甘草湯なんていう漢方薬を処方したりする。寝る前に飲むとすごく効いたりして患者さん大喜びです。内科医のキラーコンテンツと言っていい。細胞膜を安定化するんでしょうかねえ。だったら強力ミノファーゲンなんて効くんでしょうか。43歳になったんです、私。なんと足がつったんです。寝ている時ね。ちょっとショックでしたが、まあ考えて見れば「つる」という状態は過度の刺激を神経線維に与えなければ起きるはずないんです。で、思い返してみるとこんなポーズになっている。こんなです。矢印見てください。つま先伸びてますね。まるでバレリーナみたいでしょう。明け方にこうやって背伸びしていたんですね。その瞬間に足がつっている事に私は気づいた。これじゃあつるの当たり前なんです。腓腹筋(ふくらはぎ)をおもいっきり収縮させているわけですから。それで試しにアキレス腱を伸ばすようにしたんです。図を見てくださいね。明け方に、「ふわ~あ」と身体を伸ばすときのポーズ。このときには踵は90度。アキレス腱を伸ばして、背伸びをします。こうしますとね、全然足がつりません。その事に気づいてから、患者さんに指導しました。「足がつるんですが」「夜中に背伸びするときにたぶんつま先を伸ばしてしまっているはず。逆に踵をしっかりと曲げて、アキレス腱を伸ばすように背伸びをしましょう。今実演するからちょっと見て」と、上のポーズを見せる。「あとは、さあ背伸びっていうとき、『つま先伸ばしちゃダメ!』って、思い出してね」と指導します。これが結構効果がある。芍薬甘草湯使わないで済んじゃう。こういう事に気づいた時には、年とってちょっと良かったかもね、って思います。さらにこうやってぼ~っと考えていると「早朝高血圧って、芍薬甘草湯で効くんじゃない?」とか変な考えが浮かんできて面白いわけです。”