ブチ切れない技術、怒りやイライラと上手に付き合う 怒りの裏には別の感情がある

ブチ切れない技術、怒りやイライラと上手に付き合う
 周りとうまくいかない、分かり合えない、チームの足並みがそろわない――。開発プロジェクトを率いるリーダーは常にイライラの種を抱えている。こうした怒りの感情の上手なコントロールが、リーダーに求められる必須条件になりつつある。
 怒りをコントロールできずに“ブチ切れる”リーダーは、チーム全体にイライラを伝染させる。怒りは高いところから低いところへと流れ、対象が身近になるほど強くなる。つまり、リーダーの怒りがプロジェクトメンバーに連鎖していく。イライラに振り回されるとチームの雰囲気が悪くなり、離職率が上がり、生産性が低くなる。
 かといって、怒りを無理に我慢するのも良くない。リーダーをイライラさせるメンバーの言動が改善されず、後から「あのとき怒っておけば良かった」と後悔する羽目になる。
 そんな悩めるリーダーにオススメなのが、怒りやイライラと上手に付き合う心理トレーニング「アンガーマネジメント」だ。1970年代に米国で誕生した手法で、海外では企業、政財界、スポーツ界、教育、福祉、司法など多くの分野で活用されている。
 誤解されやすいが、アンガーマネジメントは「怒りを我慢する方法」でも「怒らなくなる方法」でも「怒りを消す方法」でもない。その時の機嫌や気分に影響されずに「怒る必要があること」と「怒る必要がないこと」を区別していく技術だ。
 怒りはなくならないし、なくせない。ごく自然な感情だからだ。どんなに温厚に見える人でも、怒りがないわけではない。日本アンガーマネジメント協会が10代~60代の男女1000人を対象に実施した調査では「怒りを感じることはありますか?」という質問に対し、24.2%の人が「よくある」、55.2%の人が「まぁまぁある」と回答した。8割の人は怒りを感じると自覚しているのだ。
 以下では、アンガーマネジメントを活用して、怒りとうまく付き合う方法を解説しよう。
怒りの裏には別の感情がある
 そもそも、怒りという感情はどのようなメカニズムで生まれるのだろうか。怒りのメカニズムを知ると、怒りと上手に付き合える。
 どんなに「怒りやすい」人でも、怒りは急に降って湧いてくるものではない。実は怒りになる前には本当の気持ちがあるのだ。
 心の中にコップがあるとイメージしてみよう(図)。その中に毎日「疲れた」「辛い」「心配」「不安」「不満」といったネガティブな感情がたまっていく。出来事に対する直接的な感情のことを「第一次感情」と呼ぶ。この第一次感情がたまり心のコップからあふれると怒りとなって現れる。怒りは「第二次感情」といわれ、怒りの裏には本当の気持ち(第一次感情)が隠れているのだ。
 ネガティブな第一次感情は、だいたいは一晩寝れば減ったりなくなったりする。しかし、ストレスが高い状態では、一晩経ってもネガティブな感情は十分に減らなくなる。不機嫌になり、些細なことでもイライラする「怒りっぽい人」になってしまう。
 セルフコントロールとしては、怒りの裏にある本当の気持ちに自分で気付けると、怒りにまで至らずに済んだりする。心のコップの中にはどんな感情が入っているだろうか。心のコップが満杯になる前に、ぜひ、その中にある第一次感情に目を向けるようにしよう。
 ほかの人とのコミュニケーションも同様だ。怒っている人は、第一次感情を分かってもらいたくて怒っているといっても過言ではない。相手の怒りの中にある第一次感情に目を向けた接し方に変えると、怒りがスッと引いたりする。