ブチ切れそうになったら6秒待て
怒りを感じた時、反射的に言い返してはいけない。今日から取り組んでほしいのが「6秒ルール」。諸説あるが、怒りの感情のピークは長くて6秒。そこで、衝動的な言動をコントロールする実践的な10の方法を紹介しよう。
(1)頭を真っ白にする
6秒をやり過ごすには、怒りを生み出している要素を考え続けてはいけない。怒りのピークは過ぎ去るどころか、ますますヒートアップしてしまう。そこで、あえて「思考停止」状態になってみよう(ストップシンキング)。頭の中で「真っ白」をイメージして、それ以外の考えを頭から追い出す。そうすると、怒りの感情からいったん離れられる。
(2)数を数える
怒りを感じた時、絶対にやってはいけないのは反射的に言い返すことだ。そこで、イライラする気持ちを感じたら、心の中で数字を数える(カウントバック)。意識をほかに向けて、反射的な言動を妨げるのが狙いだ。単純に1、2、3と数えるだけだと効果が不十分なので、100から3ずつ引くなどちょっと複雑な数え方にするのがコツだ。
(3)今に釘付け
イライラしている要素から頭を切り離すため、目の前にある何かに意識を集中してみる。このテクニックをアンガーマネジメントでは「グラウンディング」と呼ぶ。わざと怒りの要素とは別のものに意識を向けることで、怒りの感情をそらすのが狙いだ。
意識を集中させる対象は、手に持っているペン、携帯電話、時計、PCなど何でもいい。それはどんな色をしているのか、どういった形なのか、傷はどこにいくつ付いているのか、文字のフォントはなめらかか、とにかく目の前にあるものをひたすら観察する。
意識が釘付けになっている間は、怒りを思い出して感情を増幅させてしまうのを防げる。
(4)怒りの温度を測る
怒りをコントロールしにくい理由の一つに、尺度がないことが挙げられる。たいしたことのない怒りが暴走して、怒鳴り散らした後に後悔に襲われてしまったりする。
そこでイラっとした瞬間、温度計をイメージしてみよう(スケールテクニック)。最大を10として、10は「人生最大の怒り」、7~9は「怒り心頭、爆発寸前」、4~6は「頭に来る、腹が立つ」、1~3は「カチンと来る、不愉快」といったものだ。今の怒りのレベルを数値化してみると、怒りの暴走を防止できる。
ここで気をつけたいのは、あくまでも目の前の出来事だけを考えて数値化することだ。「いつもだ」「何度もやられた」などと以前の出来事を加算しないようにしよう。
(5)落ち着く言葉を唱える
イラっとしたとき、あらかじめ用意しておいた“魔法のフレーズ”を心の中で唱え、気持ちを落ち着かせる。こうしたテクニックを「コーピングマントラ」と呼ぶ。コーピングは「対処」、マントラは「呪文」という意味だ。
言葉自体は何でもよい。「大丈夫、大丈夫」「まあ、いいか」など自分に言い聞かせるフレーズを持っておこう。ペットの名前や意味のないフレーズでもいい。心が落ち着くフレーズを唱えていれば、それが怒りの意識をそらしてくれる。怒りの感情から反射的に発してしまいがちな、「要らない一言」が口から出てこないようにできる。
(6)前向きな言葉を唱える
イラッとした時に、「これはチャンスだ」「きっとうまくいく」といったポジティブなメッセージを含むフレーズを唱える(ポジティブセルフトーク)。混乱した気持ちを落ち着かせるコーピングマントラと違い、自分を前向きにしたり元気にしたりするためのテクニックだ。
(7)息を吐き切る
怒りが湧くと呼吸が浅く速くなり、交感神経が優位になった「戦闘モード」になる。ここから強制的にリラックスモードに切り替える方法がある。深呼吸をするのだ(呼吸リラクゼーション)。
深呼吸のコツは息を吐き切るように意識することだ。鼻から4秒息を吸って、8秒掛けて口から息を吐き切る。こうした深呼吸を行うと、副交感神経が優位になり、脳と体がリラックスしてくる。
(8)その場を離れる
抑えるのが難しいほど強い怒りを覚え、エスカレートしてしまいそうな時は、仕切り直しが必要だ。そんな時は、その場を離れてみよう(タイムアウト)。
ただし、黙って出て行くのは厳禁だ。必ず「16時にまた話そう」などとコミュニケーションを再開するつもりがあると伝える。そうしないと、立ち去られた側は困惑や不安を感じ、かえって関係を悪化させてしまう場合がある。
タイムアウトの最中は、怒りを思い出したり、飲酒や運転といった感情を高ぶらせる行動をしたりするのは避ける。できるだけリラックスするよう心掛けよう。
(9)怒りをイメージ化する
怒りをコントロールしにくいのは、目に見えないものだからだ。怒りを頭の中で視覚化してみると、コントロールしやすくなる(エクスターナライジング)。怒りの色、形、大きさ、温度をイメージして、それを最後にゴミ箱に捨てると想像してみる。
(10)24時間穏やかに振る舞う
「24時間アクトカーム」と呼ぶテクニックがある。アクトは「演じる」、カームは「穏やか」という意味。24時間徹底して穏やかに振る舞い、周囲がどう変わるかを体験する。実際の感情がどうであろうと、とにかく言葉遣い、仕草、表情などを穏やかに振る舞う。
あえて忙しい時にやってみると効果が高い。24時間が難しければ、揉めやすい会議の時、苦手な相手と会っている時などと限定した場面で演じてみるだけでもいい。