断種法の制定 スウェーデン1934年

スウェーデンでは1915年に婚姻法が改正され,知的障害者,精神病患者,そしててんかん患者の婚姻が禁止された。しかし,20年代に入って,議論はさらに断種法の制定へと拡大する。国会での約10年にわたる議論を経た後,スウェーデンの断種法(正式名「特定の精神病患者,精神薄弱者,その他の精神的無能力者の不妊化に関する法律」)は,「国家の家」(folkhem)を標語に,福祉国家の確立を訴えたハンソン社民党政権下で,1934年5月に制定された。
 この法律によって,精神病患者,知的障害者に対する不妊手術が合法化された。その第一条は「精神疾患,精神薄弱,その他の精神機能の障害によって,子どもを養育する能力がない場合,もしくはその遺伝的資質によって精神疾患ないし精神薄弱が次世代に伝達されると判断される場合,その者に対し不妊手術を実施できる」と定めている。その際,重要なのは,手術は,保健局の審査ないし医師の鑑定にもとづいてなされ,本人の同意は不要とされたことである。その理由は,この法律がそもそも不妊手術の対象としている人びとは,その障害ゆえに自己決定能力を期待できないとされたことにある。

米本昌平・松原洋子・橳島次郎・市野川容孝 (2000). 優生学と人間社会:生命科学の世紀はどこへ向かうのか 講談社 pp. 118-119