満州事変が始まるころからはダメになる一方でした 宮澤喜一

宮澤喜一
 満州事変が始まるころからはダメになる一方でした。中学から高校にかけて圧迫される感じがどんどん強くなって、左翼の集まりがあると警察官がやってきて、ちょっと発言すると白墨で背中にスッと線を引く。黒い制服ですから白墨が取れなくて捕まる。(『新・護憲宣言』p.175)

宮澤喜一
 自由は突然なくなるのではない。だんだんなくなっていくんです。気がついたときには酸欠でどうにもできなくなっている。はじめのときを気をつけるしかないのです。自由が侵されそうになるあらゆる兆しに、厳しく監視の目を向けなければならないのです。(『21世紀への委任状』p.18)
宮澤喜一
 国会審議は、非効率であっても慎重であるべきだ。性急に物事が決まっていくことに対し、防波堤の役割を果たす制度があることはとても大切なんだ。行政、官僚の側から見ても、二つの「院」があるのは厄介。それこそが立法府が存在する理由だ。「簡単には進まない」からいい(『ハト派の伝言』p.62)
宮澤喜一
 なぜ、政治の世界になじめなかったかというと、私は、ものごとをきちんと正確に考え正確に表現すべきであると……考えてきました。政治の世界はどうもそれとは逆で、政治家の表現はしばしば情緒的ですし、演出的な要素がつきまといますね。そういう部分に反感が…(『新・護憲宣言』p.149)
宮澤喜一
 われを忘れて没入しろということを先輩は言うわけですけど、私にはそれはできないし、もっと言えば国政という大事なものを預かっている人間が「われを忘れ」てはいけないと思っている…。歴史を見れば、われを忘れて熱狂し没入して破滅にいたった国は随分あります。(『新・護憲宣言』p.149)