厚生労働省は、働き盛りの世代で多く発症する「若年性認知症」の全国実態調査を初めて実施する方針を決めた。
2017年度から3年かけて患者とその家族約1万人の就労状況や生活実態を調査したい考えだ。高齢者の認知症と比べて遅れがちな支援策を検討する。
調査は、国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(東京)が国の予算約6000万円で行う。認知症グループホーム約1万3000か所や、認知症専門の医療機関約360か所などを対象に、アンケート用紙を配布。患者数、性別、年齢などを尋ねる。また、これらの関係機関を通して、本人や家族に、発症に伴う就労形態や収入の変化や、職場が行った配慮などの質問に答えてもらう。
同省は現在、若年性認知症の患者数を約3万8000人と推計している。同省の研究班が06~08年度に行った調査を基にしたものだが、地域が茨城県や徳島市など5県2市に限られ、利用者や家族の生活実態を詳しく調べていなかった。
子どもの教育費や住宅ローンなどで出費のかさむ働き盛りが認知症になり、突然仕事を失うケースも多い。「認知症介護研究・研修大府センター」(愛知県大府市)が、大阪府など15府県の介護施設などで行った14年度の調査では、発症に伴って約8割が仕事を辞めたり、休職したりしていた。
また、「認知症は高齢になってから発症するもの」と思い込んで受診が遅れたり、受診をしても、うつ病などと間違われたりするケースもある。介護保険サービスは高齢者を想定したものが多く、若年性認知症に特化した支援が遅れていた。
適切な治療が受けられず、症状が悪化。経済的に困窮するケースもあり、高齢者の認知症と比べて、深刻な事例も多いとの指摘も出ていた。
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若年性認知症 65歳未満で発症する認知症。発症の平均年齢は51歳前後。高齢の場合と比べて、特有の症状はないとされる。原因は、脳梗塞などによる「脳血管性」が約4割と最多。65歳以上の認知症は、2015年時点で500万人超と推計されている。