今週後半は少なくとも野党の都議会議員から会期延長を求める声が既に上がっていておかしくないタイミングです。でもそうした声が一切聞こえてこないこと自体、やる気のなさを象徴しています。
これは全ての地方議会に該当することではありますが、そもそも都議会議員はあまり働いているとは言えません。例えば昨年1年間で都議会が開催された日数は合計で90日だけです。行政側と議論を戦わせる、新しい政策の実現のために条例を提出するなど、都議会議員の仕事の中心は都議会でなくてはおかしいはずです。その都議会が1年に3ヵ月しか開催されないで、東京が直面する全ての政策課題について議論を尽くして、必要な新しい政策を作れるはずがありません。
だからこそ、メディアは都議会を巡る報道では、15日が会期末であることを当然の前提としてはいけないと思います。
東京のメディアは全国メディアなので、都議会という東京ローカルの問題に慣れていないのは分かります。しかし、少なくとも今のままでは舛添知事の追及が不十分なままに都議会が閉会する可能性が高いのですから、都議会の会期は延長できるものなんだ、その延長を求める声が野党の都議会議員からも上がってこないのはおかしい、という主張を展開してもいいのではないでしょうか。
忘れてはいけないのは、この都議会を乗り切れば舛添知事はリオ・オリンピックの閉会式に東京の代表として出席できるという点です。しかし、少なくとも私は、そんな光景は絶対にテレビで見たくありません。国民の多くが同じ思いではないでしょうか。
その一方で、大臣秘書官をやった経験から、おそらく舛添知事は毎日の都議会での質疑が終わった後は、質疑の時のしおらしい表情とは正反対に、秘書などの側近たちと“これなら乗り切れる”と話しているのではないかと邪推しています。その理由は簡単、追及が甘いからいわゆる国会答弁でやり過ごせるし、“都議会もあと数日で終わる”という思いがあるからです。
それでは、なぜ都議会を延長すべきという議論が盛り上がらないのでしょうか。舛添問題との関連で言えば、与野党双方の都議会議員に共通して、本音では舛添知事を辞任に追い込む気がないからとしか思えません。
本当に辞任してしまったら都知事選をやらないといけないので、それでなくても参院選前の忙しいときに知事選で勝てる候補者を探すのは与野党とも凄まじく大変なはずだからです。だからこそ、会期を延長してとことん追い込もうとは考えていないはずです。
かつ、そもそも地方議会の議員は、国政選挙では地元の支持者を固めるという大事な足回りの役割を担います。従って、政党に所属する都議会議員からすれば、1ヵ月後に参院選が迫っている今は、さっさと都議会を閉会させて参院選に集中したいはずです。
加えて言えば、都議会で都知事に対する不信任案を提出して可決したら、逆に都議会を解散されて自分たちの選挙になりかねません。参院選は忙しいし、自分の選挙はなるべく先になってほしいとなると、それは舛添知事をとことん追い込むのには逡巡するはずです。
このように考えると、この原稿を書いている9日(木)の時点で、都議会は総務委員会での集中審議を13日(月)と20日(月)に開催することを決めましたが、都議会の会期を延長することなく閉会後に1日だけ審議を追加するという情けないまでの中途半端さに、舛添知事を辞任まで追い込む気はないけれど都民の怒りに対応しているふりはしたいという、都議会議員の姑息さを感じざるを得ません。
ちなみに、「7月に都知事選をやると2020年に東京オリンピックの直前にまた都知事選となってしまうので良くない」といったもっともらしいことを言う政党関係者もいますが、そんな屁理屈に騙されてはいけません。
くどいようで恐縮ですが、都議会議員は与野党双方とも本音では、真剣に舛添知事を辞任にまで追い込む気がないとしか考えられないのです。