ゴリラの抑制力

私がゴリラの研究を始めたのは、彼らは人間の超えられないものを持っていると思ったからです。一言でいえば“抑制力”です。
 ゴリラのリーダーは決して力を誇示せず、同種を威圧することなく、もめ事を調停しさえします。ゴリラの雄の力はものすごく強い。
 けれども、その雄ゴリラが小さな子供たちに囲まれると、力を抑制して子どものなすがままにたわむれる。その光景は信頼感に溢れ、いかにも美しい。翻って、人間は相手に合わせて自分も幸福になるという能力を失い始めています。