うつ病とは・うつ病の症状・うつ病の治療法
うつ病は感情の病気です。気分が沈んで何をするにもおっくうになります。気の持ちようが悪いとか、怠け者になったなどと誤解されることも多く、治療を遅らせる原因にもなっています。どんな病気を理解して、正しく対処することが大事です。
うつ病の症状
ゆううつ うつ病は、これといった理由もないのに、気分が沈みこんできます。悲哀感が増し、意気消沈します。涙も出やすくなります。将来のことも悲観的、絶望的に感じます。
思考が渋滞する
うつ病は考えのスピードが遅くなります。質問しても答えが返ってくるのが遅く、声は小さく力なく、口数も少なくなり、ゆっくりとした話し方になります。計算も面倒になり時間がかかります。そのためお年寄りでは、痴呆になったのではないかと疑われることもあります。
優柔不断
うつ病は決定に時間がかかり、迷ったあげくに何一つ決められなくなります。例えば「入院しますか、それとも外来で治療しますか」とうつ病の人に聞いても、自分では決断できないことがよくあります。そういうときには、十分な説明をした後に、「こうした方がいいと思いますが」という風に提案すべきです。
興味関心の喪失
うつ病は、今まで楽しみにしていたことも、おっくうになってやる気がなくなります。欠かさず見ていたテレビの連続ドラマも見る気がしなくなります。踊りの練習が楽しみで毎週通っていたのが、全くやめてしまったという人もいます。
おっくうになる
うつ病は、何かやりたいという気があっても、行動に移せない状態です。やらなければならないけれども、おっくうで何もする気になりません。「やる気があっても体がついていかない」という言い方をします。話をするのも面倒になり、友人などが見舞いに来てくれても、聞かれたことに返事をするのにも、エネルギーを要します。掃除、洗濯などもやらなければならないと思っていても、やる元気がなく、こんなことではいけないと思うのですがどうにもならず悩んでしまいます。
自分を責める
うつ病は、自分ほど情けない人間はいない、周囲の人に大いに迷惑をかけているという風に、自分を責めるような考えがわいてきます。そして、自分がいない方が周囲のためになる、死んだ方がましだと自殺を考えるようにもなります。
死にたくなる
うつ病の自殺は一般の人の36倍多いと言われています。自責感や絶望感から将来のことを悲観的に考え、生きる意欲がなくなってきます。うつ病相の初期や回復期に多いので注意が必要です。重いうつ状態の時には、自殺を実行する元気がないのです。
日内変動
午前中に具合が悪く、夕方になるとよくなるというように、一日のうちでも症状に変化があることがあります。いつもよりはるかに早く目が覚めて、ゆううつで悲観的なことばかり考えながら苦しい朝を迎え、それが午前中いっぱい続き、午後から夕方にかけてよくなっていくという経過をとるのです。
このような変動は、うつ病の人全員に起こる訳ではありません。一日中具合が悪いという人もいます。
身体症状
不 眠:
うつ病は、寝付きはいいけれども、早朝に目が覚めてしまうという形のものが多く見られます。普段は6時頃まで寝ているが、最近は3時か4時くらいに目が覚めて、それからはいっこうに眠れず、悲観的ないやなことばかり考えて、朝を迎えるというタイプです。
食欲不振:
うつ病は、何も食べる気がせず、義務で食べているという感じになります。食べてもおいしくなく、砂をかむような感じです。そのため体重が減ってきます。まれに、何か食べていると気分が紛れるということで、食べ過ぎて太ってくることもあります。
性 欲 :低下します。
その他の身体症状: 頭が痛い、頭が重い、便秘、下痢、胸がどきどきするなどのいろいろの身体の症状が出ることがあります。寒さには弱くなります。
大うつ病
うつ病の治療と心構え
うつ病は人によって、特別の誘因や動機がなくて起こることもあり、また心配ごとがあったり、多忙の日がつづくとか、責任の重い地位につくような場合に発病することもある。元来の性質は、かならずしも内向的とはかぎらず、活動的で働き好きの人も多い。凡帳面で、何ごともいい加減ではすまされず、やりだすと熱中して緊張状態がつづくという傾向の人に多く見られる。責任感も強く、信用のおける人が多いのであるが、ときとしてゆとりのない、融通のきかないような人もいます。
うつ病になると、まず気がふさいで、晴ればれせず、何ごとにも興味を失って世の中が味気なくなる。仕事をするのもおっくうで、会社員など、朝出勤することに非常な抵抗を感じる。仕事をしようとしてもなかなか手が出ず、やっても速度が鈍く長つづきせず、能率も上がらない。気が重くなって、動作もハキハキせず、決断もつきかねてただ迷っている。
気分がふさぐと同時に、ものの考え方が悲観的になり、何ごとも悪いほうに悪いほうに考えてしまう。過去のことも後悔すべきことが多いように思われ、前途には希望もなく、現在を八方ふさがりのように感じ落ち込んでしまう。
うつ病の人たちには、この状態が病気のためだとある程度自覚して、進んで医療を求める人、病気ではなく、本当に心配ごとがあるから心配するのだと思いこんでいる人、何ごとも悲観的に考える症状として、医療にかかってもけっしてなおらないと信じこむ人などがある。症状の軽重の程度はさまざまで、ごく軽い程度のものでは、ただ気分がすぐれず仕事がはかどらない、世の中がつまらないというほどのものがある。うつ病
うつ病の重いものでは、極度に悲観して種々の悲観的妄想に悩まされる。強い劣等感に悩む者、事業がだめになったとか財産もなくなると思いこむ人、会社や家族に迷惑をかけて申しわけがないという罪業観念を起こす人、自分の体がだめになっていると信ずる者、自殺念慮の強い人もあり、実際に自殺する人もいる。
一室に閉じこもって口もあまりきかないで沈んでいる型のものと、苦悶が強くてじっとしておれず室の中をウロウロして落ちつかない興奮型のものがあり、苦悶の強いときは胸が苦しく圧迫感の症状を訴える人もいる。
うつ病の大多数の人は夜眠れない。神経症の人は眠っても眠った感じがしないものが多いのであるが、うつ病では実際に眠りが少ない。ただ例外的に、かえって平生よりたくさん眠るものがある。これはただ無気力になって、興奮性の乏しい型のものである。頭重、頭痛、便秘などを伴う。性的なことにも関心がなくなるのが一般的です。
うつ病は、内部的に気分が重くなっているので、気分を転換することがむずかしい。家族が気晴らしをしたら良いと旅行を勧めたり、ショッピングにさそったりするが、そんなことをしても当人は少しも喜ばず、かえって刺激が悲しみの種になるぐらいで治療的効果はないと筆者は感じる。いくら説得しても当人の心には入っていかず、悲観的な妄想の誤りを話しても、表面的にはわかるようでも感情が納得しないという調子である。
うつ病は、一生の間に一、二回起こるものもあり、数回くり返して発病する人もある。なお、この病気の人はときとして、反対の躁状態になることもある。治療法としては、神経症が精神療法を主とするのに対して、薬物療法を主とし、それに精神療法を加味することが理想的であると感じる。種々の向精神薬〔SSRI、他精神安うつ病家族定剤、など〕を症状に応じ適宜使うことで治癒の期間を短くすることができる。
うつ病を治すには、刺激を少なくすること、この病気はかならず治るのだということをよく説明することも大切である。精神療法を行なう施設の、平和で親しみのある雰囲気のなかに生活することも治し方のひとつで好影響を与える場合もある。好転するに従って、適度の仕事や運動もするように指導する。
なお、うつ病の再発を予防するには、この病気にかかりやすい人の特徴である何ごとにも熱心でゆとりがなく、緊張がつづきすぎ、その末に病的なスランプに陥ることをよく自覚して、あまり緊張をつづけないことが大切である。
ある程度仕事をすると、他のことで気分を変えること、そのためには仕事一点ばりでなく、いろいろスポーツや趣味にも興味をもつように平生から心がけることが好ましい。この病気にかかる人は、仕事がすむまで午前1、2時ごろまでつづけることが多いが、このような習慣はお勧めできない。休日にはまったく仕事から解放されることも望ましい。
また本人としては、うつ病になっても、かならず好転することを信じて医療を受けること、つらくても時を待つこと、それから、全快してからは調子にのりすぎて緊張をつづけることを避けることが大切である。よくなるとやりすぎる人がこの型の人には多いので、再発しやすいのである。
うつ病の経過
うつ病は臨床的には、躁病と反対の症状を示すが、躁状態とうつ状態とが混在しているケースも少なくないので、まったく正反対の症状を示すと云うわけではない。感情は悲哀的になりやすく、ささいなことも悲観的になる。嬉しいことにも反応しな表情はさも悲しげで、ため息をついたり、涙を浮かべたりすることが多い。疲労感が強く無気力で、おっくうである。歩行も前かがみに力なく歩く。胸が重苦しく、せつない気分である。
意志面では活動力が低下し、行動が遅くなる。話しかけられても、あまり話したがらない。思考面では、思考のテンポが遅くなり、記憶、判断、計算などの活動も低下する。周囲の人はみな自分よりも優れていると考え、強い劣等感を抱くようになる。自分の将来、体力、能力など、すべてに自信がなく、悲観的に考える、過去はすべて失敗だらけだっうつ病治療たと思うようになる。
これらがさらに発展すると妄想が生じますが、妄想では心気妄想(自分が不治の病気になっていると誤解する)、貧困妄想(事実ではない、一家が食べるものもない貧乏になったと思い込む)、関係妄想(他人に噂されている、じろじろみられているという誤った観念)、被害妄想(人にいじめられる、殺されるという誤った観念)などがよくみられる。
知能面では、注意は固着し、視野も狭くなる。思考のテンポが制止して、理解力、記銘力、見当識(時間や場所に対する正しい認知)などが落ちてくる。決断力や判断力も低下するが、これは知的障害というよりも、意志障害の結果であろう。
身体面では、自律神経系の障害により、さまざまな症状が現れる。不眠症状は、うつ病の大部分を占め早朝覚醒、夢など、あらゆる型の睡眠障害が起こる。食欲不振、性欲減退、体重減少、暑さ寒さに対する抵挽力の低下、胃腸の障害がよくみられる。
うつ病
うつ病の経過 具体例
まず第1段階、どうにも気分が上がらず、だらだらした生活を送るようになる。これまで興味を抱いていたTV、音楽、外出にも、関心を示さなくなる。TVや音楽は、どのようなジャンルであれ、賑やかでウルサく感じ、新聞や本も賑やかで圧迫され読む気になれない。誘われれば友人と一緒に出かけたりもするが、興味が長続きしない。勉強や仕事も、「やらねばならない」という気持ちはあるものの、能率が上がらず、ぼんやりしていたり、ベッドで横になることが多い。
注意は散漫になり、優柔不断で、自信がなく、劣等感に悩むようになる。未来に希望がもてず、自分の過去は灰色だったと回想する。食欲も減退するが、食べて食べられないことはない。好物も味気なく、まるで砂を噛むようである。
又、ときどき不眠を生ずるがこれも早朝覚醒型で、2,3時間眠ったと思うと夜半から目がさめて苦痛である。夢もよくみて、寝汗をびっしょりかくこともある。うつ病者によっては、だらだらと終日寝ている人もいる。積極的に自殺をしたいとは思わないが、自暴自棄な言動はよくみられる。
うつ病になる人は、まじめ人間が多いので、「自分は急に怠け者になった」「家族に申しわけない」と思い、自分に鞭打って勉強、仕事にやる気を出そうと努力するが、気ばかりあせって能率は上がらない。頭がぼんやりし、口の渇き、胃腸の不快感、手足のしびれ、冷感など生ずる。うつ病家族
学校や職場も休みがちになり、周囲の者が励ましたり、叱ったりすると、涙ぐんだり、反抗的になったりすることがある。この状態から回復する場合もあるが多くは、つぎの第2の段階に進んでいく。
第2段階になると、うつ病症状は激しくなり、しかも激しく変動する。憂うつ感は顕著になり、イライラ感も強い。一日中に何度となく気分変動があるが、多くは、午前中は調子が悪く、午後になると気分が上がってくる傾向がある。
家族や上司、友人に対して申しわけない気持ちが強く、学生なら退学届け、OLサラリーマンなら辞表を提出する人がよくある。周囲の者に迷惑をかけまいとする気持ちと、勉強や仕事をやめると気分の転換がはかれるのではないかという期待が、そうさせるのであろう。
うつ病症状で、自分はまったく無価値な人間であると思い、劣等感も強い。考えがまとまらず、将来にまったく希望が持てない。この頃になると早朝覚醒型の不眠が顕著に出現する。食欲がなく、体重は著しく減少し、1.2か月間に10Kg程度やせる人もいる。性欲も減退し、身体的不調も強い。人前に出たがらなくなる。自殺を企てる。この状態になると周囲の者はもちろん、本人も自分が病的になったことに気付く。しかし、精神病、うつ病といわれることを恐れて専門医を訪れない人も多い。この状態がさらに進行すると、第3,4段階に移行してゆく。
第3、4段階は、医学的にはもっとも重症の状態であるが、おとなしくなるので家族は扱いやすく軽症になったように錯覚することもある。しかし、抑うつ感は著しく絶望的な気分であるのが一般的である。くどいように何度も同じ訴えをする。心気妄想、貧困妄想、被害妄想が強いことも多い。食欲はまったくなく、立っていること、座っていることもできず、終日寝たままである。身なりをかまわず不眠症状も強い。顔色は青ざめ、痩せも目立つ。女性であれば化粧もしない。死にたいと思っても、エネルギーがないので、自殺の危険性はむしろ少ない。しかし、油断をしていると、刃物など様々な手段で自殺が起こることもある。この状態を放置しておくと、肺炎や脱水症状などを併発することもある。
第4の段階を過ぎると、第2段階と症状のよく似た第5段階に移行する。
この段階では、病気の改善のきざしがみられる。激しく頻回の気分変動が出現する。しかもこれは、第2段階のときよりも著明である。周囲の人に助けを求め出す。人嫌い、劣等感、不眠、食欲不振、性欲減退は依然として認められるが徐々に改善してくる。客観的には、多少元気になり、言葉数も多くなり、血色もよくなって体重も増加してくるので改善したように家族はひと安心するが、主観的には気分はあまり変わらない。苦悩に身もだえすることは続いている。
ただし、この時期にはもっとも自殺が生じやすい。その理由は、第一に気分変動がもっとも激しい時期だということである。医学的にみると、第5段階は第3,4段階よりも軽症である。しかし、第5段階において気分がよかったり、悪かったりをくり返すとその気分の落差が主観的には第3,4段階の時期よりも絶望感をもたらすのである。 第二は、医師も家族も同僚も、自分自身も病気が改善してきたことに安心してアフターケアをおろそかにしがちなことである。第三は、もともとまじめ人間であるから、よくなってくると社会復帰の負担を人一倍強く感ずるのである。
第6段階になると、依然として気分の揺れはあるが、その変動は少なくなり自信も出てくる。食欲、睡眠、疲労感、身体症状、性欲などすべてが改善してくる。しかし、一見して元にもどったようにみえても、勉強や仕事は長続きせず、すぐに疲れる。病者は、第5段階境から学校や職場に復帰したがるが、完全に治ったものと錯覚していると、再び症状が再燃し絶望的になるので留意する必要がある。
うつ病”
うつ病の診断チェック (一例)
1. うつ病の身体症状
頭痛・頭重感、筋肉の凝り痛み、体の節々の痛み、食欲不振(食べても砂を噛むような感じ)、胃痛、下痢便秘、息苦しさ・胸が重いく苦しい感じ。
2. うつ症状の日内変動
午前中に具合が悪く、午後から夜にかけ徐々に改善していく。
3. うつ病行動の変化
イライラが募り、衝動的な行為をしたり、他人に対して批判的で攻撃的な態度が目立つ方もあり、性格の障害との鑑別が難しい場合がある。
4. 月経前や更年期の症状
月経前緊張症とは違い、抑うつ症状が多く程度も重い月経前不快気分障害と呼ばれる状態には抗うつ薬が効果的。 また、更年期もうつ病の好発時期であり、更年期障害との鑑別に注意が必要。
5. うつ病は身体症状の訴えが多い
「病気を持っていれば気持ちが落ち込むのは当たり前」との考えからうつ病を見過ごすことが多いので注意が必要。
精神症状よりも身体症状の訴えが特に多いのが「うつ病」の特徴でもあろう。軽症のうつ病では精神症状よりも、身体症状が強いことが多い。したがって、精神科や心療内科を訪れる前に、内科において 胃内視鏡や心電図検査をすでに済ませている人もいる。
全身倦怠感、肩こり、めまい感など不定愁訴、胃部不快感、食欲不振などの身体症状からうつと診断しても、当事者や家族が納得されないことも多いのが「うつ病」である。
神経症と何が違うのか
それでは、以下に、神経症とうつ病との異なる点を示しておきます。
(1)神経症にも不眠の生ずることはあるが、その多くは入眠困難で、実際にはよく寝ている。うつ病の不眠は必発症状といってもよいくらいよくみられるが、これは早朝覚醒型で、実際に睡眠量が著しく減少している。
(2)神経症は訴えは多いが、病像はそれほど深刻でなく、しばしば自殺を口にしても、実行に移すことは少ない。うつ病は症状が深刻で、あらゆる事柄に興味を失い、顔つきも青菜に塩で、体重も著しく減少し、よく自殺が起こる。
(3)うつ病では午前中に気分がすぐれず、夕方にもち直すといった気分の日内変動がみられるが、神経症には著明な日内変動はない。
(4)病前性格は、ともにまじめ人間のはあいが多いが、神経症は概して自己中心的で、自分本位なのに比べ、うつ病では、自己を犠牲にしても他人につくすといった、他人本位の性格が目立つ。
(5)うつ病では、よく周期的な発病がみられるが、神経症ではそれがない。
(6)神経症では抗うつ剤はそれほど効果がなく、心理療法が治療の主役になるが、うつ病では抗うつ剤がよく効く。
(7)神経症で妄想(まちがっていること、ありもしないことを確信すること。いくらそれが誤りであると証拠をつきつけても訂正不能)のみられることはまずないが、うつ病では心気妄想、貧困妄想、被害妄想などのみられることが少なくない。
以上のような諸点に留意して、うつ病と神経症とを区別することが必要である。