過去にとらわれるのが人間というものだ

過去にとらわれるのが人間というものだ
その人にとって真実は過去しかないのだから
過去がなくなれば猫のように平和に暮らすかもしれない
過去と言っても個人の過去はたかが知れている
経験の範囲も狭い
科学の経験は人類共同で蓄積してゆくものであるから
遥かに巨大で迅速である
個人の経験の蓄積ははるかに微笑で遅鈍であるから
科学と個人の内面で大きな齟齬が生じてしまう
これは苦しみの元となる
未来に牽引されて意志することのなんと尊いことか
しかしながらその未来は過去の鏡像でしかない場合がある
結局は過去である
深層心理と言ってもいいような過去の強力な記憶が人間を動かす
それは進化論的に脳の構造として固定されたものでもある
何が最も最初の、最も強力な力なのかとの話は長く続いたと思うが
何が一番というものでもなく
場面によって違いがあるということになるだろう