ゾフルーザ
まず、抗インフルエンザ薬が必要かを評価する
まずは、抗インフルエンザ薬がその患者さんに必要かをアセスメントする必要があります。インフルエンザは基本的には自然軽快する疾患であり、発症から48時間以降では抗インフルエンザ薬は意味がありませんし、ハイリスク患者でない限りは有症状期間をせいぜい半日-1日程度短縮する効果しかなく(Cochrane Database Syst Rev 2014; 4: CD008965)、副作用リスクや耐性化リスクもありますので、この辺りのメリット・デメリットを患者ごとに説明した上で「処方しない」という選択肢もあります。
処方の際に説明した方がよいこと
では、現時点でバロキサビルの使用を想定できるのはどのような患者なのでしょうか。CAPSTONE-1試験の対象は12-64歳のリスク因子のない患者、かつ非重症例であり、それ以外の患者集団では現時点でエビデンスがほとんどないということを把握しておく必要があります。高齢者やハイリスク群での検討はCAPSTONE-2試験で検討されており、既に有効とのプレスリリースはされています(2018年7月17日付企業リリース 参照)。ただ、論文はまだ出ていないので、現状はバロキサビルを使用するにしてもCAPSTONE-1試験の対象患者に限定すべきと考えます。
使用期間については、既存のノイラミニダーゼ阻害薬の5日間毎日内服or吸入よりも、1日で済む製剤の方がアドヒアランスは良いですし、その点は大きなメリットでしょう。
症状改善効果については「オセルタミビルとほぼ同等であり、周囲への感染リスクは早期に減少するけれども、1割程度の確率でむしろウイルス排出期間が長引く可能性がある」という説明が必要です(B型なら長引く可能性の言及は不要と思います)。ただし、耐性化の懸念は残ります。
また、保険が利くとはいえ、値段の違いもありますからそこの説明も必要です。最も安いオセルタミビル先発品は2720円に対し、バロキサビルは4789円です。2018年9月から後発品であるオセルタミビルカプセル「サワイ」も販売開始となり、先発品の半額の1360円に設定されていますので、3割負担でもバロキサビルと1000円ほどの差が出てきます。
私自身は、外来で患者に説明し納得してもらった上で抗インフルエンザ薬を処方しないこともあります。以上の点を踏まえた上で、個人的には次の流行シーズンで処方する機会はかなり限定的と考えています。