ED座談会
男性 男性として思うのは、EDの薬などでスムースにセックスすることが「強制」されるような気がすること。男性の責任だと。できなければ「失格」みたいないやな感じ。セックスなんて対人関係の一部でしかない。手を握るだけで充分ではないか。
男性 あの瞬間の情けなさはやはりつらい。「できるはずなのに」と愕然とする。しかも、女性に申し訳ない。とても好きなのにできないと、「好き」という気持ちが嘘があるようで。
男性 間違った「男性性」信仰ではないか。オープンに話し合えば女性は分かってくれる。強くて若い男性がいつまでも続くはずがないのは常識だ。
男性 間違っているかどうかは勝手だ。わたしは何をしてでも治したい。
男性 うつ病の人は病気の最後の局面までEDを持ち越すことが多い。患者さんはみんな仕方がないと諦めているけれど、治療の最後で自信を取り戻すことも大切だと思う。そんな局面では積極的に薬剤を使いたい。
男性 緊張しやすい人も親密になるまでの間、やはり薬剤が有効だと思う。アルコールで勢いをつけるよりもずっと合理的だ。
女性 わたしの感じ方では、セックス自体はそんなに大切ではない。なければなくてもかまわない。ただ、愛情の表現がもっと豊かだといい。「大切に思うよ」とか「いま気持ちがあふれている」という表現として、キスをするとか、強く抱きしめるとか、そんなことをもっとして欲しい。そんなことがなくて、ただセックスにこだわるのはあまり意味がない。
男性 一部の患者さんの話。「自分にとってはじめての相手とセックスするとき、うまくいかないことがあって、何とかならないものかと思っている。薬よりもむしろカウンセリングで自分の心の仕組みを知りたい」。
男性 なるほどそうだ。そんな場合は、むしろシャイな感じで、女性としては好感を持つのではないか。ただ、はじめての相手が頻繁にあるのは心配だけれど。
男性 女性は、「わたしに性的魅力がないからできないのではないか」と悩むこともあるらしい。
女性 男性が薬剤を使うのは、お金を払ってセックスをする場面が多いのではないか。親密な女性であれば、そのようなことを強く要求はしないと思う。妊娠したいという場合は別だけれど。いろんなことを話し合うだけでわたしは満足だ。
女性 エイズの問題が広まってから、性交渉はある程度節度のあるものになっているのではないか。信用できる人でなければセックスしたくないのは当然。むしろ、自分のパートナーがお金を払ってセックスするような場面があるということに、不信感を持つ。性感染症はわたしにも影響するわけだから。セックスをなんだと思っているのか。
女性 いろいろな人間交渉があるわけだから、自由も大切だ。その人との相性を確認するという点ではセックスは大切。けんかしても仲直りができる。大切にされていると確認することもできる。
女性 性的に尽くすことでしか男性を引きとめられない女性もいる。そんな人間関係だと、セックスがうまくいかないと女性も不安になる。だからうまくできることがお互いに要求される。
男性 年をとればだんだん不自由になるのは自然なことではないか。女性は自然なことと受け止めていると思う。うつ病の場合も、セックスまでエネルギーが回らないのは当然だと理解している。精神的に完全に回復したら、そのあとゆっくりとセックスも回復すればいいと思っていると思う。
男性 女性も、加齢に従ってだんだん変化してくる。男性は女性の変化を自然なものと受け止めていると思う。EDについては男性だけが過度に気にしているのではないか。女性が過度にしわとりをしたり、体型の若返りを試みるのと同根ではないか。
男性 男性としてのアイデンティティに関わるのではないか。自然な変化を拒否するのは未成熟だ。
男性 わたしはどうしてもこの経路でのコミュニケーションが大切だ。敢えて言えば、アイデンティティの一部だ。譲れない。
男性 どこまで医療の範囲かと考えてしまう。生活改善と言うけれど、夫婦の関係であれば、薬を使うまでもないのではないか。話し合えばいい。心を開くことができれば関係は悪くならない。余計な改善をしているのではないか。
女性 ある夫婦は、食事の工夫をしているといっていた。ご飯にウナギをのせて、とろろをかけて、その上に卵を落とす「うなとろ丼」。ニンニクをそのまま電子レンジで加熱して噛るとか。マグロをサクで買ってきて、最初はお刺身、次は細かく切って納豆と混ぜる、最後はさらに細かくしてネギと混ぜる。生姜も元気の元になる。そんなことを通じて共通の目標ができれば、それはそれで楽しいかと思う。笑いながら暮らせる。
男性 でもコレステロールが。
男性 マカはどうか。あまり確実な情報がない。漢方薬はある程度いいと思う。
女性 性産業との関係はやはり気にかかる。
男性 エイズが怖い。クラミジアなどの性感染症の蔓延も気になる。
男性 EDの場合も、いつまでも薬が必要なわけではない。話を聞いていると、「できないかと思うといつまでも気にかかる。一度薬剤を使ってうまくいくことが分かったら、あとは気にしないですむようになった。解決法が分かれば、あとは卒業できる」とのことだった。
男性 感じ方も対処も、個人差が大きい。他人の価値観に寛容でありたい。