熱中症になると、どのような症状に襲われますか?

――熱中症になると、どのような症状に襲われますか?
 熱中症は重症度に応じて3段階に分類されます。軽度である「I度」はかつての分類である熱失神、日射病、熱けいれんに相当し、症状としては、めまい、頭痛、筋肉痛、ふくらはぎなどのけいれん、あくびなどがあります。
 中等度の「II度」は熱疲労に相当し、疲労感、倦怠感、手足に力が入らない、不快感、I度よりひどい頭痛、吐き気・嘔吐、判断力や集中力の低下、意識がもうろうとする――などの症状があります。
 熱射病に相当する「III度」は重症度では最も重く、意識障害やフラフラして歩けない、けいれん発作などの症状を呈します。また、血液検査をすると、肝臓や腎臓に障害が起こっていたり、血液凝固異常といって血栓(血の塊)ができやすい状態が認められたりします。
 めまい、頭痛、筋肉痛、ふくらはぎなどのけいれん、ごく軽度の疲労感や倦怠感などが診られれば、すぐに涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて両側の首筋、わきの下、足の付け根を冷やします。氷や保冷剤があればそれで、なければ冷たいペットボトルなどでも構いません。タオルやうちわなどで仰ぎ、風を送って身体を冷やしてください。
 水を十分に摂取することも忘れてはいけません。塩分と水分が適度に配合された経口補水液であれば、より理想的です。ただし、嘔吐していたり意識がなかったりした時は、水分が気道に入る可能性があるため、無理に飲ませるのはやめてください。
 これらの処置をしても回復が見られない場合、あるいは最初から意識障害を起こしている場合は、すぐに医療機関を受診してください。命にかかわる可能性があります。
 ――見逃されやすい症状はありますか?
 軽度の熱中症で生じるめまい、頭痛、筋肉痛などは、様々な病気で見られる症状です。「いつもの」だと思い、放置しているとだんだん悪化してきた……というケースも珍しくありません。この暑い季節、特に屋外で活動していたり水分補給が十分でなかったりした時にめまいや頭痛などが生じたら、熱中症を疑い、前項で紹介した対策を講じるべきです。
● お酒やコーヒー、緑茶での水分補給はNG 「牛乳」が熱中症予防に良いという説も
 ――熱中症の正しい予防策を教えてください。
 基本は、水分補給です。水分というとアルコールや、カフェインを含むコーヒー、緑茶などを水代わりに飲んでしまう人が多いですが、利尿効果によりかえって脱水症状を引き起こし、熱中症のリスクを高めるおそれがあります。だから私は必ず「“水を”飲んでください」と伝えるようにしています。ただし、心臓病や腎臓病を患っている方は水分摂取量に制限が設けられているため、主治医に相談してください。