耳鳴りの漢方

耳鳴における牛車腎気丸と釣藤散の鑑別ですが、牛車腎気丸は、腎の異常が目標になりますから、高齢者で腰痛、下肢の冷え、夜間頻尿などを伴う場合です。釣藤散は肝の異常が目標になりますから、頭痛や神経過敏、のぼせ・不眠などを伴う場合が目標になります。耳鳴は現代医学的にも種々の要因があるのと同様に、漢方医学的にも気血水の各々の異常で生じ、五臓論の観点からも肝・心・腎の異常として捉えることができます。代表的なものとして、瘀血の観点から桂枝茯苓丸・加味逍遥散・当帰芍薬散があげられます。特に加味逍遥散は、耳鳴が気になるなどの精神面からも改善が期待され、私は頻用しています。肝の異常の観点から、釣藤散以外に、柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯などの柴胡剤が有効です。その他、抑肝散や龍胆瀉肝湯も使用されます。腎の異常の観点から、牛車腎気丸以外に八味地黄丸・六味丸も使用されます。耳鳴に随伴する症状に応じて、鑑別していただければと思います。