N Engl J Med 総説「入院高齢患者の譫妄」

N Engl J Med 総説「入院高齢患者の譫妄」の最重要点は次の8点です。
せん妄に有効な薬はなく極力、非薬物治療を行え。ベンゾジアゼピンを使うな!
拘束を避けて眼鏡・補聴器を使い、歩かせ、トイレ誘導、下剤使用、時計・カレンダーを
尿閉、便秘はせん妄を起こす。トイレ時間誘導し緩下剤を出せ!深夜のバイタルチェックやめて不必要な覚醒を避けよ!
1日3回「時間、場所、人」を繰り返し教えよ(reorientation)!
抗コリン薬、第一世代抗ヒスタミン薬、H2受容体拮抗薬を中止せよ!
疼痛は譫妄を起こす!鎮痛薬は頓服でなく定時(round the clock)処方せよ
興奮で危険なときのみ抗精神病薬(ハロペリドール、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン)を少量使用
1. 暴れるせん妄を薬で静かにできるが死亡率は上昇する
 今回の総説での最大ポイントは「せん妄は薬剤で改善できない!」です。確かにhyperactiveなせん妄(暴れるせん妄)を薬剤でhypoactiveなせん妄(おとなしいせん妄)にすることはできます。しかしhypoactiveなせん妄の方が生命予後はなんと悪くなると言うのです。
 せん妄で試された薬剤は、ハロペリドール(商品名セレネース)、オランザピン(ジプレキサ)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、ケタミン(ケタラール)、デクスメデトミジン(プレセデックス)、リスペリドン(リスパダール)、ラメルテオン(ロゼレム)などがありますが、いずれも全滅、「討ち死に」で、死亡率を改善しませんでした。
 せん妄は独立した死亡リスクであり、なんと死亡率は2倍となります(odds ratio2.0、95%CI 1.5~2.5)。せん妄は決して一過性ではなく、入院中せん妄の45%は退院時にも残存しており、1カ月後も35%で見られたとのことです。小生、以前は病棟で患者がせん妄を起こすと抑肝散とチアプリド(グラマリール)を分3、それに眠剤としてクエチアピン(セロクエル)を処方して解決できたつもりになっていました。しかし現在、世界では、「せん妄は極力、非薬物的治療を行え」が常識なのです。
2. 拘束を避けて眼鏡・補聴器を使い、歩かせ、トイレ誘導、下剤使用、H2受容体拮抗薬を避けよ
 特に明日からでも私たちが実行できる重要なポイントは次の7点です。
眼鏡、補聴器をかけよ:感覚のインプットが減るとせん妄を起こす
抑制・拘束するな:抑制はせん妄を起こす
尿閉、便秘はせん妄を起こす:トイレ時間誘導、緩下剤を出せ
とにかく座らせ、立たせ、歩かせよ
1日3回、スタッフが「時間、場所、人」を繰り返し教えよ(reorientation)
病棟に時計、カレンダーを置け(日時が分からぬとせん妄を起こす)
鎮痛薬は頓服でなく定時(round the clock)で出せ!
 小生、昔、天竜川の奥の小さな病院にいました。小生のオーベンが若いとき、山の上の村落に往診に行ったところせん妄の高齢者がいました。帰ってきて、そのまたオーベンに「下腹部がぽっこり膨らんでいた」と報告したところ、「お前、これを持ってもう一度往診に行ってこい」とネラトンを渡されたそうです。再度往診して導尿したところ、せん妄が治まったとのことでした。
 小生、知らなかったのですが尿閉でせん妄を起こすことを”cystocerebral syndrome”と言うのだそうです。せん妄の原因として尿閉はともかく、「便秘もせん妄の原因になる」というのは小生、知りませんでした。特に鎮痛に麻薬の継続指示(standing orderと言うのだそうです)を出しているときは、必ず緩下剤を処方しましょう。
 また、薬剤はせん妄を起こす大きな因子ですので必ず詳細にチェックします。特にベンゾジアゼピン系薬は避けます。これ自体がせん妄を起こすからです。これを使用するのはベンゾジアゼピン系薬やアルコールの離脱症状のときのみとします。どうしても眠剤が必要なときはラメルテオン(ロゼレム、メラトニン受容体作動薬)とします。ただし、ラメルテオンはせん妄を減ずるという報告(67人)と、有意差なしという相反する報告(529人)があります。
 また抗コリン薬、第一世代抗ヒスタミン薬、H2受容体拮抗薬(抗コリン作用がある)などはせん妄の原因になりますので極力中止します。
 抗コリン薬は、高齢者の過活動性膀胱で処方することが多いので要注意です。オキシブチニン(ポラキス、ネオキシテープ)、フェテロジン(トビエース)、ソリフェナシン(ベシケア)、イミダフェナミン(ウリトス、ステープラ)、トルテロジン(デトルシトール)、プロピベリン(バップフォー)などです。
 第一世代抗ヒスタミン薬には、ジフェンヒドラミン(レスタミン、ベナ)、ジメンヒドリナート(ドラマミン)、クレマスチン(タベジール)、d-クロルフェニラミン(ポララミン)、プロメタジン(ピレチア)、ヒドロキシジン(アタラックス)、ジプロヘプタジン(ペリアクチン)などがあります。なお、The Lancet(2011; 378: 2112-2122)のアレルギー性鼻炎総説には、「これらの第一世代抗ヒスタミン薬は、作業効率の低下、小児の学業成績不振を起こすので使うな」と書いてありました。
 H2受容体拮抗薬(ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ロキサチジン、ニザチジン、ラフチジンなど)がせん妄の原因になるというのは小生にとっては驚きでした。H2受容体拮抗薬には抗コリン作用があるからです。『今日の治療薬2017』(南江堂)を見たら副作用に確かに「錯乱、意識障害、幻覚」などが書いてありました。ちっとも知らなかった。
3. 疼痛はせん妄起こす! 鎮痛薬は頓服でなく定時(round the clock)で処方せよ
 また疼痛自体がせん妄の原因となりますので、疼痛に対しては鎮痛薬を頓服とするのでなく、定時(round the clockと言います)にアセトアミノフェンやNSAIDを処方しますこれは重要なポイントです。
 せん妄で特にハイリスクの薬を以下に挙げます。
【せん妄でハイリスクの薬剤】
ベンゾジアゼピン:せん妄を起こす。内服している場合は減量。突然中止するな(痙攣!)
麻薬:鎮静、抗コリン作用、便秘(fecal impaction)を起こす。ただし疼痛自体もせん妄を起こす。腎障害があると副作用が出やすい。中毒にはナロキソン。アセトアミノフェンやNSAIDを定時に(around the clock)出せ
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ゾルピデム(マイスリー)など。これ自体がせん妄を起こす。極力薬物に頼るな
第一世代抗ヒスタミン薬:極力使用しない。第二世代以降を使用。患者がOTC(薬局)で購入してないかを聞け
アルコール:過飲の場合の離脱症状にはベンゾジアゼピン系薬を使用
抗コリン薬:尿失禁には時間でトイレ誘導。抗コリン薬低量でせん妄を起こすことはまれ
抗てんかん薬:てんかんリスク少なければ中止か他の製剤使用
三環系抗うつ薬:アミトリプチリン (トリプタノール)、イミプラミン(トフラニール)は抗コリン作用あり。SSRI(パロキセチン、セルトラリン、エスタシロプラム、フルボキサミン)か、SNRI(デュロキセチン、ミルナシプラン、ベンラファキシン)に変更せよ
H2受容体拮抗薬:抗コリン作用あり。減量するかPPIに変更せよ。特に高用量の静注で起こる
抗パーキンソン病薬:高用量使用でドパミン中毒が起こる。減量する
抗精神病薬:クロルプロマジンなど。抗コリン作用による。中止するか減量
バルビツール酸系薬:原則使用しない。漸減するかベンゾジアゼピンに置換
4.せん妄の診断はCAM(Confusion Assessment Method)が優れる!
 せん妄が認識されているのは患者の12~35%で、見逃し例が多いのだそうです。せん妄評価ツールとしてCAM(Confusion Assessment Method)が最も優れます。鑑別として認知症、うつ、急性精神病症状もあります。ただし合併はあります。家族から普段の精神状態と比べて異なればせん妄と判断するのが無難とのことです。普段の様子が分からなければ、せん妄を発症したと判断できません。
 CAMは以下の4つの features(特徴)から成ります。
【CAM algorithm】
① Feature 1:精神状態が急激に変化、変動する
② Feature 2 : 不注意(inattention)
③ Feature 3 : 壊れた思考(disorganized thinking)
④ Feature 4 : 意識レベル変化
 具体的に何を調べるのかというと、「3D-CAM」ってのがあります。「3D-CAM」ってなんだか聞いたことがあるなあと思って調べたところ、「三次元コンピューター制御工作」(3D-computer assisted manufacturing)でした。ここでは、その意味でなくて、”3-minute Diagnostic interview for delirium using Confusion Assessment Method”のことで、せん妄の感度95%、特異度94%です。
 最近、整形外科のインプラントでも患者のCT立体画像から3D-CAMで人工股関節などのインプラントが積層造形でつくられるようになってきました。2、3年前、日本整形外科学会で技術者による講演がありました。以前から、小生疑問に思っていたことですが、例えば日本刀を製造する際、鋳造(casting:鋳型に金属を流し込む)でつくった刀なんか使い物になりません。必ず鍛造(forging)と言ってトンカントンカン金槌で鍛えなければ切れる刀はできません。
 「積層造形でつくった人工関節の強度は鋳造や鍛造と比べてどうなんですか?」とお聞きしたところ、「とても良い質問だ。まさか医者からこんな質問をされるとは思わなかった」とおだててくれました(エッヘン)。積層造形でつくった人工関節の強度は鋳造と鍛造の中間ぐらいだとのことでした。最近は、インクを細胞にして積層造形で血管や神経をつくることもできるようになっています。やがては臓器を丸ごとつくれるのかもしれません。
 日本刀といえば、患者に居合い八段の方がいます。この方に刀剣雑誌を見せてもらったのですが、その巻末に毎回クイズがあります。刀剣の写真があって、これは誰の作かを当てるというものです。この方は毎回、葉書で応募し、毎号のように上位入賞するのです。こんな雑誌があるんだというのが驚きでした。また以前、畜産をやっている方に、『月刊ホルスタイン』というマニアックな雑誌を見せていただきました。だけど、一般の人が、『日本整形外科学会雑誌』なんてみたら、「へー、こんな雑誌があるんだあ」と、月刊ホルスタイン並みの驚きなんだろうなあと思いました。
 せん妄に対する3D-CAMは4つのfeaturesに対して具体的には次のような質問を行います。
【3D-CAM】
 以下のうち、①と②が存在し、かつ③か④があればせん妄とします。
 またカルテまたは家族の話から、精神状態の急激な変化を確認できれば①は存在するものとします。
① Feature 1:精神状態が急激に変化、変動(Acute change in mental status with fluctuation)
患者の反応
過去数日、次のようなことがあったか質問。
・訳が分からなくなったか?(confused)
・ここは病院ではないと思ったか?
・幻視があったか?
観察者が見て次のうち1つでもあればfeature1が存在
・意識の変動
・注意力に変動
・会話、思考に変動
② Feature 2:Inattention (不注意)
患者の反応
・Digit span (3) :3つ数字を言って逆から言わせる
・Digit span (4) : 4つ数字を言って逆から言わせる
・曜日を逆から言わせる
・月を逆から言わせる(日本語じゃあ使えないなあ、睦月、如月・・は小生も言えない)
観察者が見て次の1つでもあればFeature 2が存在。
・インタビューを保つのに患者が苦労するか?
・患者がすぐに飽きてしまうか?
③ Feature 3:壊れた思考(disorganized thinking)
患者に次のこと(年月日、場所)を聞いて答えることができない。
・現在の年号は?
・今日は何曜日か?
・今いる場所は(病院)?
患者の思考経路が非合理、またははっきりしないか?
・会話がとりとめない(rambling)、脱線気味(tangential)、(小生もそうかなあ)
・発語が異常に少ない
④ Feature 4:意識変化(altered level of consciousness)
観察者が見て
・傾眠気味か?(インタビュー中に患者が眠ってしまうこと)
・活気があり過ぎるか(hypervigilant)
5.疼痛はせん妄を起こす!鎮痛薬は頓服でなく定時(round the clock)で処方せよ
 せん妄のリスク因子には素因(predisposing factor)と増悪因子(precipitating factors)があります。もともと素因のある者に増悪因子が加わってせん妄が起こるのです。素因が多いと増悪因子が少なくてもせん妄は発症します。したがって若人でせん妄を起こさないような増悪因子でも高齢者、frail(か弱い)だと発症するわけです。
 素因には高齢、認知症、機能障害、重症合併疾患、男性、視力障害、難聴、抑うつ、MCI(軽度認知障害)、臨床検査異常、アルコール飲用があります。一方、増悪因子には薬物(特に眠剤、抗コリン薬)、手術、麻酔、疼痛、貧血、感染、急性疾患、慢性疾患の増悪などがあります。
 治療可能なせん妄誘発因子は「DELIRIUM」と覚えよとのことです。
 特に見逃しやすいポイントは、必ずDrugを点検すること、鎮痛薬の不足(Lack)はないか(疼痛だけでもせん妄が起こる!)、眼鏡・補聴器を使用しているか、尿閉、便秘はないかなどです。
【治療可能なせん妄誘発因子:DELIRIUM】
Drugs:新たに始まった内服薬、その増量は? アルコールは? サプリは?
Electrolyte:脱水の有無は? Naのバランスは? 甲状腺は?
Lack of drugs:アルコールや眠剤を急に中止しなかったか? 鎮痛薬の不足は?
Infection:特に尿路感染、気道感染、軟部組織感染
Reduced sensory input:眼鏡や補聴器はあるか? 感覚(input)が少ないとせん妄を起こす
Intracranial disorders:脳の感染、出血、脳卒中、腫瘍
Urinary tract and fecal disorders:尿閉(cystocerebral syndromeという)
便秘(fecal impaction)は?
Myocardial and pulmonary disorders:心筋梗塞、不整脈、心不全、低血圧、貧血、COPD増悪、低酸素血症、高CO2血症
 行うべき検査はCBC、electrolytes、BUN、Cr、胸部X線、EKGです。追加検査として血液・尿の毒物検査、血培、血ガス、脳画像診断、腰椎穿刺(髄膜炎、脳炎)、脳波(てんかん)などがあります。
6.深夜のバイタルチェックをやめて不必要な覚醒を避けよ!
 せん妄の合併症予防としては、抑制・拘束を禁止し、患者を極力歩かせます。拘束は重大事故につながります。特にベッドの4点柵は乗り越えると死亡事故につながります。4点柵を乗り越えるよりは、3点柵で床にずり落ちた方がまだましです。定時に排尿誘導しトイレへ行かせます。バルーンカテーテル留置自体がせん妄を起こすのでカテは極力避けます。当、西伊豆健育会病院では極力、間欠導尿としています。
 不眠に対しては極力、非薬物治療とし眠剤使用を避けます。また深夜のバイタルチェックなど、不必要な覚醒を避けます。これはわれわれが継続指示で「深夜のバイタルチェックは不要」と出すべきだと思います。これはユマニチュードという認知症患者に対する技術でも強調されていることです。
 また病棟内は整理整頓、騒音を避け、昼間は明るく、夜間は暗くし、また家族に自宅から身の回りのもの(家族写真、数珠、バッグなど)を持ってこさせます。以前、長女に「その数珠はどうした?」と聞いたところ「数珠じゃない、ネックレスだよ」とのことでした。また、スタッフが1日に3回以上、時間、場所、人を教えてreorientationを行います。
7. 興奮せん妄で危険なときのみ抗精神病薬使用せよ
 患者が興奮せん妄(agitated delirium)で本人、他人に危害が及びそうなときのみ、抗精神病薬を使用します。ベンゾジアゼピン系薬は使用してはなりません。しかしせん妄治療の12のRCT meta-analysisで抗精神病薬は、せん妄期間、重症度、ICU/病院入院期間、死亡率を改善しませんでした。
 せん妄で試された薬剤は、ハロペリドール(商品名セレネース)、オランザピン(ジプレキサ)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、ケタミン(ケタラール)、デクスメデトミジン(プレセデックス)、リスペリドン(リスパダール)、ラメルテオン(ロゼレム)などがありますが、いずれも全滅、「討ち死に」で、死亡率を改善しませんでした。というわけで、抗精神病薬は興奮、幻覚、妄想の抑制と、鎮静、薬による副作用とのトレードオフ(trade-off:一方を追及すると他方が犠牲になる関係)なのです。
 興奮せん妄に使われる薬剤には次のようなものがありますが、いずれも米国では適応外使用(off-label)です。
 東京のデパート地下では午後8時になると値札が剝がされ(off-label)半額位になります。長女はいつも8時過ぎにデパ地下で買い物するので、販売員にすっかり顔を覚えられてしまいました。
 薬剤を下記に掲げますが、その効果はどれでもそれほど変わらないので、「副作用に注目せよ」とのことです。この総説に記されていた初期用量は、日本の用量よりも少なく、本当に低用量から始めるんだなあと驚きました。
【興奮せん妄(agitated delirium)に使われる向精神薬】
 下記のうち、ハロペリドールは鎮静作用が最も少ないのですが錐体外路症状があります。ハロペリドールは注射剤があるのでICUでは便利です。クエチアピンは最も鎮静作用が強いのですが、錐体外路症状は少ないそうです。
 患者の反応はさまざまなので低用量で開始します(日本国内よりも少量で開始です)。追加は30~60分ごとで鎮静が得られたら中止します。これらの薬剤は抑制と同様できる限り早く中止します。
・ハロペリドール(セレネース:内服0.75、1、1.5、3mg錠、注射5mg/mL):国内0.75~2.25mg/日で始め漸増、維持3~6mg/日。注射は5mg/回、1日1~2回。3mgを超えると錐体外路症状が起こりやすい。米国では0.25~0.5mgで開始(日本より少ないことに注意)、最大3mg。せん妄では最古の実績(track record)
・リスペリドン(リスパダール:内服0.5、1、2、3mg錠、リスパダールコンスタ:注射25、 37.5、50mg):セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)、1㎎/回、1日2回で開始漸増。維持2~6mg/日、2回に分服、最大12mg/日。米国では初期量0.25~0.5mgで開始(これも日本より少ない!)、最大3mg。低用量では錐体外路症状はハロペリドールより少ない。効果はハロペリドールに極めて類似
・オランザピン(ジプレキサ、ザイディス:内服2.5、5、10mg錠、筋注:ザイディス10mg):多元受容体抗精神病薬(MARTA)、国内1日1回5~10mgで開始、維持10mg、最大20mg。米国では2.5~5mgで開始(日本より少ないことに注意)、最大20mg。鎮静効果はハロペリドールより強い、高血糖を起こす
・クエチアピン (セロクエル、内服25、100、200mg錠):MARTA、国内25mg/回、2~3回/日から漸増、150~600mg/日、2~3回で分服、最大750mg/日。米国では初期量12.5~25mg(日本国内より少ない)、最大50mg/日。鎮静効果はハロペリドールより強い。高血糖を起こす。パーキンソン患者では注意
・ロラゼパム(ワイパックス、内服0.5、1.0mg錠):ベンゾジアゼピン系。国内1~3mg/日、2~3回分服。米国:初期量0.25~0.5mg、最大2mg/日。逆説的興奮(paradoxical excitation)、ハロペリドールより呼吸抑制強い
 最後にせん妄の予防としては、1999年にHELP(Hospital Elder Life Program)という非薬物的手法が出現し、70歳以上の入院患者でせん妄を減らすことが確立されました(外部リンク参照)。その具体的方法は、以上で述べた、reorientation(1日3回日時、場所、人を確認)、非薬物的睡眠導入、離床歩行、眼鏡・補聴器使用、飲水奨励などです。