強迫性障害の中間表現型 Endophenotypes in Obsessive-Compulsive Disorder OCD患者と第一度近親者では言語再生、セットの移行(set-shifting)、反応抑制、視覚構成能力が障害されている。 強迫性障害(OCD)には遺伝性が認められ(JW Psychiatry Jun 13 2011)、その特徴的な認知機能障害は一見健常に見える家族にもみられる可能性がある。Rajenderらによる本研究は、このような中間表現型が存在するのか、存在するならば、どの神経心

強迫性障害の中間表現型
Endophenotypes in Obsessive-Compulsive Disorder
OCD患者と第一度近親者では言語再生、セットの移行(set-shifting)、反応抑制、視覚構成能力が障害されている。
強迫性障害(OCD)には遺伝性が認められ(JW Psychiatry Jun 13 2011)、その特徴的な認知機能障害は一見健常に見える家族にもみられる可能性がある。Rajenderらによる本研究は、このような中間表現型が存在するのか、存在するならば、どの神経心理学的機能が関与しているのか、という疑問を明らかにする目的で実施された横断的研究である。研究には、Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scaleに基づきOCD(主症状は手洗いと確認行為)と診断され、溜め込み徴候(hoarding symptom)や他の精神疾患はなく、薬物治療歴のない外来患者30例、患者の第一度近親者で無症状の30例、そして健常対照者30例が参加した。3群は年齢、言語性知能指数(IQ)、性別構成でマッチングされており、社会人口統計学的特性は同様であった。
参加者全例に標準的な神経心理学的検査、知能検査、人格検査、精神症状評価が実施された。OCD患者群および第一度近親者群ともに対照群に比べ、言語再生、セット移行能力、反応抑制、視覚構成能力の成績が有意にわるかった。計画時間(planning time)の成績は患者群において有意に低かったが、計画能力(actual planning)、即時再生、そして行動の結果予測は3群間で同様であった。
コメント
本研究はOCDの中間表現型に関するはじめての検討であり、今後はさらにより大きな集団において再現性の検証、および拡張性の検討を行う必要がある。このような限界はあるが、中間表現型マーカーを構成していると思われる特定の認知機能障害がOCD患者の第一度近親者で無症状の人に存在することを、今回の知見は示唆している。これらの中間表現型はまだ見つかっていない遺伝子多型あるいは神経画像上の差異に一致する可能性がある(JW Psychiatry Jun 6 2011、Aug 30 2010)。最終的には、これらの中間表現型はCOPD患者のより精緻な診断分類法の基盤として役立ったり、患者や近親者に関する予後情報をもたらすかもしれない。