“病名をあえて付けるなら「フルデジタル病」。
2014年の4月に心機一転、作画環境に新風を入れたいとの思いで突如フルデジタル化を決意し、その週のうちもに液晶タブレットを複数台購入し練習もなくいきなりスタッフと一緒にコミスタを勉強をしながらペーパーフリーの作画環境に突入しました。帝一の國の9巻の終わりから始まり、「女子高生に殺されたい」一巻の143頁からフルデジタルです。初めの数ヶ月はタブレットに慣れる事とコミスタの使い方に思考錯誤していて、結局思い通りに描けるようになるまで約10カ月、単行本にして2〜3冊かかりましたがようやくネームから仕上げまですべてフルデジタルという環境に慣れるようになりました。
フルデジタル導入から8ヶ月、
2015年1月に入ってから原因不明の睡眠障害、精神の不安定、免疫力の低下による微熱が続き、週に一度点滴を受けないと仕事ができない状態になりました。念のためあらゆる腫瘍マーカーを受け、胃カメラやレントゲンなども撮りましたが異常は発見されず、2月に医師が下した病名は自律神経失調症。デパスという依存性の高い抗不安薬を処方されました。
それからデパスなしでは眠れなくなりました。体調不良も相変わらずで点滴に通いながら毎週の作画をこなしていました。もうこの頃にはフルデジタルの方が綺麗で尚且つ手描きよりも早くなっていました。
3月、自律神経を治すには太陽光が良いと聞いて毎日30分程日光浴を始めましたが一ヶ月程続けても体調不良、不眠、精神不安定は改善されず、
夜中にボロボロと泣きだすこともしばしばで、これは鬱病かもしれないと心療内科への通院を本気で考え始めた時、ふとフルデジタルを疑いました。勿論使い始めた頃からパソコンメガネを使用し、画面の光量も最小にしてました。でも消去法でこれしか無いように思ったのです。しかしその頃には技術も確立していて、修正が可能なフルデジタルならではのほぼ下書きなしで描けるようになっていました。
ここまで確立した技術を捨てるのは勇気がいる事ですが身体と心が資本、これに勝るものはないと割切り、5月頭にスッパリとフルデジタルを捨てました。一年前と同じように下書きとペン入れは手描き、そして仕上げはデジタル。そのデジタルにも1年前より厳しい規制をかけ、夕方4時以降は使用禁止としました。パソコンの光は太陽光と同等のブルーライトを発していると聞いて、それを寝る直前まで見てることによって自律神経が壊れてしまったと考えたのです。
結果、この決断は正しかったようです。次第に精神状態は安定し、不眠用にもらっていたデパスも漢方薬局不眠に効く漢方を処方してもらい止めることができました。海外では使用がきつく制限されているデパスの依存性、危険性を知ってからは早く止めたかったのです。
それから一ヶ月半が経過し、睡眠障害に関してほぼ改善され、精神も安定してきました。
そして作画方法は全く元に戻ったわけではなく以前よりはデジタルが多くなりました。
ネーム→枠線→吹き出し→あたり
までデジタル。
それをトレスしながらの下書き→ペン入れがアナログ
ベタ入れ、効果、アシスタントが描いた背景との合成等をデジタル。
この方法で効率はフルデジタル導入前より上がりました。確かにフルデジタルに慣れると不便さを感じますが、まあ人間が描いてるものという感じはします。
結果雨降って地が固まったかなと思います。
デジタルは確かに便利です。何回でもやり直しがききますしどこまでも細かく描けます。
しかし最近の液晶タブレットはサイズも大きい上モニターに比べ目から近い場所で作業をするのでやはり負担は大きいと思います。
勿論これは人によるので朝から晩まで使ってるフルデジタルの漫画家さんで体調まったく問題ないよという人も沢山いるのは事実です。
ですが僕の経験を書いておくことで
原因不明の体調不良に悩んでるフルデジタルの方のヒントになればと思いこれを書いておこうと思ったのです。
古屋兎丸のしくじり先生でした。”