アメリカ人のネルソン氏は元海兵隊員であり、ベトナム戦争に従事した経験を持ちます。彼はベトナムで数えきれない程の人間を殺し、アメリカに帰国した後は精神を病んで地獄の苦しみを味わい、ホームレスとなり絶望感に打ちのめされます。自分の行った犯罪行為は隠しておきたいと思うのが普通ですが、彼は自分の体験を正直に話す講演活動を開始します。極めてまれなケースですし、心から敬意を表したいと思います。事実を後世の人間に伝えることは、過ちを繰り返さないためにも欠かせません。
紹介した番組の中からネルソン氏他の言葉をいくつか紹介します。
引用始め
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ネルソン氏:
「アメリカや日本など、多くの政府は、兵士が平和を守っていると主張します。しかし訓練では、平和のことなど一切教わりません。日々、殺し方を仕込まれるだけです。」
「人を殺すということは、自分自信の精神や魂の、最も大切な部分をなくすことです。私にはもう、この大切な部分はありません。 人を殺さなければどんなに良かったでしょう。」
「平和な世界を築くのは、私たち一人一人の力です。次の世代を生きる子どもたちのために、暴力や力に頼らない道が必ずあることを伝えたい。」
「我々にとって戦争は、スポーツハンティングのようなものだった。ひとたび戦闘が始まれば、兵士たちは感情のコントロールを失う。村で激しい戦闘が始まれば、どれがベトコンで、どれが女性や子どもかなどと見分けている余裕はなく、動くもの、抵抗するものすべて撃ち殺した。しかし、相手はグークスなのだ。女や子どもだろうが、老人だろうが、みんな魂を持たないグークスなのだ。放っておけば、私たちを殺しに襲ってくる、野蛮な小動物の群れなのだ。だから、何度でも殺せた。」
「13ヶ月間、ベトナムのジャングルで過ごしました。私は多くのベトナム兵を殺害し、多くの人が死ぬのを見ました。ジャングルで最初に学んだことは、本当の戦争は映画とは全く別のものだということです。格好の良い英雄(主人公)など、存在のしようがありません。」
「俺は幻でも見ていたのか。いや、幻でも夢でもない。俺は確かにこの手で、柔らかい赤ん坊を抱いた。母さん、俺もあんなふうにして生まれてきたんだな。母さんもあの壕の中の女性のように、苦しんで俺に命を与えてくれたんだ。変わらない、何も変わらない。ベトナム人もアメリカ人も、同じ人間なんだ。魂を持たないグークスなんかじゃない。彼らにだって名前があり、家族があり、かけがえのない人生がある。そんな人たちを、俺はたくさん殺したんだ。俺は、俺はいったい、どうしたらいいんだ」
「ベトナムで学んだことは、戦争と暴力は、決して平和も幸福ももたらさない、ということです。18才で戦争に行くため家を出た時とは、私はまるで別人になっていました。ベトナムでの暴力と殺人が、私を永遠に変えてしまったのです。」
「俺は、俺は人を殺した。それも数え切れないほどのたくさんの人を。子どもたちに嘘はつけない。正直に本当のことを。いや、だめだ、もしここで殺したと言ったら、子どもたちにとって、俺はもはやミスター・ネルソンではなくなる。ただの残虐な殺人者となり、子どもたちは俺を恐れ、軽蔑するにちがいない。しかし、本当にそれでいいのか。俺は学校で、本当の戦争のことを誰からも教わらなかった。戦争で活躍した英雄の話は聞かされても、戦争の悲惨な現実は教えてもらわなかった。だから俺もヒーローになれると信じて、ベトナムへ行った。だからこそ、子どもたちには真実を知らせるべきじゃないのか?」
「アメリカ人は、ベトナム戦争が大きな過ちだったと思っています。しかし、悲しいことに、戦争そのものが間違いとは思っていません。私はここを訪れる人が、戦争自体間違いであることに気づいてほしい。戦争は決して平和をもたらさない。すべての戦争が悪いことなのです。ベトナム戦争だけのことではありません。」
「平和憲法は日本人が考え出したものではないとかアメリカ人に与えられたものだと言う人がいます。しかし、誰にもらったかは問題ではありません。平和憲法は私たちが進むべき未来を示しています。たとえ宇宙人がくれたものだとしても、これは全人類にとって大切なものです。問題は今、当初の平和の理念が置き去りにされようとしていることなのです」
「日本人は間接的に戦争に関与してきました。しかし、9条のおかげで直接的に戦争には関わっていません。言い換えると、第二次世界大戦後、日本は新たな戦没者慰霊碑を建ててはいない。そこが私には素晴らしいと思えるのです」
佐野住職:
「彼(ネルソン氏)は、たくさんの人を殺したこと、自分も死ぬほど苦しんだこと、そういう彼にして初めて、本当のこの九条の重みというものを知ってるんではないかなと。むしろ私たちは、それを知らないんだ、日本の私たちは、私も含めて。それぐらい深い、彼の願いが、この九条というものを、非常に希望をもったという、九条によって平和になるという希望、というよりも、九条そのものが存在することに希望を持てたんですね。」
「九条というものも、そういう正義から生まれてきたというよりも、たくさんの悲しみを通して生まれてきたもので、そこにもう二度と、こんなことは繰り返したくない、こんなことはもう二度と嫌だということで、そこに願い、それが誓いとなって、九条というものはそういう内容を持っていると思うんですね。平和への道は無いんだと、平和こそが道なんだと、常々おっしゃっていた。やはり真理を突いていますね。」
ネルソン氏:
「1996年に来日した時、ある人が日本国憲法の冊子をくれました。第九条を読んだ時、自分の目を疑いました。あまりに力強く、あまりに素晴らしかったからです。日本国憲法第九条は、いかなる核兵器よりも強力であり、いかなる国のいかなる軍隊よりも強力なのです。日本各地で多くの学校を訪れますが、子どもたちの顔に、とても素晴らしく美しくかけがえのないものが私には見えます。子どもたちの表情から、戦争を知らないことがわかるのです。それこそが第九条の持つ力です。日本のみなさんは、憲法に九条があることの幸せに、気づくべきだと思います。」
「ほとんどの国の子どもたちが戦争を知っています。アメリカの私の子どもたちは、戦争を知っています。イギリス、イタリア、フランス、オーストラリア、中国、韓国の子どもたち、みんな戦争を知っています。しかし、ここ日本では戦争を知りません。憲法第9条が戦争の悲惨さ、恐怖や苦しみから、みなさんを救ってきたからです」
「ご存知のように、多くの政治家が、憲法から第九条を消し去ろうと躍起になっています。断じてそれを許してはなりません。」
「今までみなさんと、みなさんの子供達は、憲法九条によって守られてきました。今度はみなさんが、第9条を守るために立ち上がり声をあげなくてはなりません。第9条は日本人にのみ大切なのではありません。地球に住むすべての人間にとって大切なものなのです。アメリカにも九条があって欲しい。地球上のすべての国に、九条があって欲しい。世界平和はアメリカから始まるのではありません。国連から始まるのでもありません。ヨーロッパから始まるのでもありません。世界平和はここから、この部屋から、わたしたち一人一人から始まるのです。」
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引用終わり