佐藤:「僕は結婚前の熱々カップルにパックツアーでの婚前旅行を勧めます。 単なるデートなら、互いに“本性”を見せ合わなくて済んでしまいます。“よそ行き”が通用するというわけです。『私たちは半同棲状態だから、相手のことは十分理解できている』、そうおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、少なくとも1週間前後。様々な個性あふれる赤の他人との『期間限定、何が起こるかわからない共同生活』=『海外パックツアー』で、私や周囲にどういう対応をする人なのかを冷静に見ることで、隠しおおせぬ本来の素顔が浮かびあがってきます」
梶原:「(ふむふむ……)」
佐藤:「ツアーに参加した高齢者にそっけない態度をとる彼は、彼女の両親を大事にできない男かもしれません。他の参加メンバーや添乗員、出された食事にいちいち文句をつける彼女は、彼の職場の友人や上司、ご近所さんと上手な関係を構築する能力に欠ける人かもしれません」
梶原:「(確かに……)」
佐藤:「『成田離婚』という言葉がありました。軽い言葉のようですが、人様にご披露した直後の離別は、2人やご家族にとっても想像以上のダメージを与えます。私はその前に、別れるべきは別れておいた方がいいと思っています。『海外パックツアーの別れ』なら、ダメージはずっと軽く済むのではないでしょうか」
つまり、パックツアーは交際を結婚に進めるべきかどうかの「リトマス試験紙」になるというわけだ。
海外での「夫婦の姿」に学ぶべき点は多い
佐藤:「一緒に参加した老夫婦の生き方に感銘して、それをモデルに自分たちもいい夫婦になろうと決意する若い男女だっているんです」
梶原:「例えば?」
佐藤:「余命宣告を受けた妻との最後の思い出作り旅行で、妻の車椅子を押してツアーに参加する心優しい夫もいます。こういう時は、参加者たちもご夫妻を自分たちなりにサポートしたいと心を一つにするんですね。妻が優しく微笑む様子を見る夫の笑顔が、メンバー全員の喜びなんです。そういう場を共有したカップルはいい夫婦になれるかもしれません」
梶原:「いい話ですねえ」
佐藤:「よくない話からも学べます。定年退職を記念した旅行に妻を誘った夫がいました。定年後、夫が家にいるのさえうっとうしいのに一緒の旅などまっぴらごめんです。しかも目的地として選んだのが赤道直下の国でした。彼女が大の暑さ嫌いなのを知っての嫌がらせかと、妻は夫に殺意さえ抱いたようです。夫婦の会話は一切なく、食事の席さえ別々の夫婦を見た結婚前の若い男女は、価値観の合わない結婚がいかに不幸かを学べました」
梶原:「……いい話ですねえ……」