しかし、この人事の本質は、さっきも申し上げたとおり、全国の裁判官、とりわけ原発訴訟担当裁判官に対しての、はっきりとした「警告」です。
この異例の人事のもつ意味は、どんな裁判官でも、ことに人事異動や出世にきわめて敏感な昨今の裁判官ならなおさら、瞬時に理解します。稼働中の原発を差し止める判決、仮処分を出すような裁判官は、人事面で報復を受ける、不遇になる可能性が高いのだと。
その名前が広く知られることになった先の樋口裁判長でさえ、しかも直後の異動で、それをやられているのですからね
関連しての問題は、マスメディアが原発訴訟に注目しなくなってからの彼の処遇です。より微妙かつ陰湿な人事が行われる可能性も否定できません。山本裁判長の今後の人事と併せ、世論の監視、バックアップが必要なのです。
国の政策に関わる重大事件で国側を負かした高裁裁判長が直後に自殺されたなどという事件も、僕自身、非常にショックを受けたので、よく覚えています。
少なくとも、定年の65歳までもうそれほど長い任期は残っていない50代半ばくらいより上の裁判長でないと、広い意味での統治と支配の根幹に関わるような裁判について勇気ある判決が出しにくいということ、これだけは、厳然たる事実でしょうね。
原発稼働を差し止めた裁判官には、東京ないしその周辺におおむね勤務し続けかつ最高裁でも勤務した経験のあるような裁判官がいないことも、事実です。