怒りの感情と上手に付き合っていくためには、まず自分の怒りの癖を知ることが必要です。どんな時、どんな事に怒っているのか、自分の怒りを分析してみましょう。感情は目に見えず捉えどころがないので、分析するために可視化する「アンガーログ」を紹介します。これは怒りのメモで、自分の怒りを客観的にみるための方法です。
このメモに書く内容は、日時、場所、出来事、そのときに思ったこと、感じたこと、そして怒りの強さ(点数)です。
いつ、どこで、何があったのか、具体的に出来事を書きます。出来事は、感情をのせずに事実のみを書きます。そのときに思ったこと感じたことの項目は、率直に思った通りに文字にしてみましょう。怒りの強さは、10段階で点数をつけるスケールテクニックという方法です。スケールテクニックについては、「あなたの怒りの測り方」(http://www.asahi.com/articles/SDI201609308726.html)を参考にしてください。
■■■怒りのメモの項目■■■
① 日時
② 場所
③ できごと
④ 思ったこと感じたこと
⑤ 怒りの強さ(点数)
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■■■■■例えば■■■■■■
日時: 10月△日 9時30分
場所: ナースステーション
出来事:使おうと思ったら必要な器材が補充されていない。
思ったこと:またAさんか。夜間に必要になったら大変。
怒りの強さ:3
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すぐにメモすることがポイントです。医療職・介護職の人は、小さなノートをポケットに入れておくのもよいでしょう。「忙しいときに、いちいち書いていられない」「書く暇があったら、業務を一つでも片付けたい」と思うかもしれません。でも、そんなときこそ、余裕がなく怒りっぽくなっているかもしれません。
とはいえ、すぐに書けない状況もありますから、無理する必要はありません。自分の書きやすい形式で、簡単に書き留めるだけでも良いので、書くことを意識してください。普段使っているスケジュール帳や日記を活用しても良いでしょう。
メモすることで、怒りを客観的に見ることができます。
「あんなことがあった」「こんなことがあった」と周囲の人に話すのに、書くのは躊躇してしまう人がいます。書こうとしても、「事実」と「思ったこと」が混ざってしまったり、自分の感情を表現できなかったりすることがあります。文字にして可視化すると、見ないようにしていた現実を突きつけられることでもあるものです。
医療者は患者の話や観察したデータに基づいて診断、推察して、治療や援助を導きます。記録することは重要な仕事の一つです。しかし、日常業務のなかでは、自分の感情に焦点を当てて記録する機会はほとんどありません。相手の感情には敏感なのに、自分の感情には気づくのは苦手という人もいるようです。
怒りにうまく対処するためには、まず自分の感情を認めることが第一歩です。誰かに見せるものでもありませんから、書いてみることです。
ときどき「毎日怒ってばかりいるのに、いざ振り返ってみると何に怒っていたのか思い出せない」という人もいます。すぐに忘れているなら、たいしたことではないのかもしれません。それでも、忘れないうちに書き溜めていくと、怒りの傾向がみえてきます。
傾向が見えたら、対策も立てやすくなります。怒りやすい時間帯、苛立つ相手、状況などがみえてきたら、それが手掛かりになります。
■■■■■例えば■■■■■■
日時: 10月○日 19時00分
場所: 自宅の玄関
出来事:家に着くなり「夕ごはんまだ?」と言われた。
思ったこと:私、仕事で疲れているの。
怒りの強さ:5
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「仕事が忙しかった日は家に帰って小さなことにも怒ってしまうかも」「家族に対しては声を荒げてしまうことが多いかな」という具合です。
「仕事で疲れた日はスーパーの惣菜に頼ろう」というような小さな対策で気持ちが軽くなることがあります。
ちなみに私は予定外の割り込み業務にイラっとします。
書くことでその場の怒りが落ち着き、冷静さを取り戻す効果もあります。紙に書いて文字にすることで思考が整理されます。すごく怒っていたのに、書いてみたら小さなことに見えたりします。示した項目を全て書かなくても、出来事を紙に書いて一読したら、紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱に捨ててしまうという方法もあります。そのときの怒りの感情も一緒に捨てるイメージです。不要な怒りを捨てて、気持ちを軽くできます。