大人のADHD(注意欠陥・多動性障害)の人間関係について。
大人のADHDは、友人や恋人、職場の同僚、雇い主とうまくやっていくことが難しく、離婚率が高いことが知られている。(Weiss & Hechtman, 1993)、また、人間関係について、次のような経験をし、悩んでいることが多い。
「それはそれ!」「これはこれ!」
上手に悩むとラクになる
□恋人や家族の誕生日などの記念日を忘れ、大事な話を覚えておらず、相手から責められた。
□懇親会の参加申し込みや書類の提出など締め切りを何度も守れず、周りに迷惑をかけ、あきれられた。
□よく「天然」だと言われる。
□自分の話ばかりして、あとから「そういえば、相手の話を全然聞いてなかった」と後悔する。
□知人は多いが、悩みを相談できるような親友と呼べる人はいない。
□恋人や配偶者とは別の人と、一夜限りの関係をもってしまった。
□いけないと頭でわかっていても、その場の雰囲気で異性と一線を越えてしまった。
□望まない妊娠を経験した。
□職場仲間やママ友などとのやりとりが面倒で、ついつい返事が後回しになり、自分がいないところでの飲み会や、輪の中に入れなくなった。
□会話中に、相手から「ちょっと聞いてるの?」と言われ、そのうち相手が自分と話したがらなくなった。
□会話を面白くしようと思っただけで、その場がしらけてしまった。後から「無神経な発言だったかな」「思いやりがなかった」と反省することを繰り返している。
□初対面の相手には、特に気を使っているつもりだが、なんとなく避けられている。
□努力しているのに、上司に評価されず、出世もできない。
周囲との人間関係でこのような悩みを抱えてしまう原因には、ADHDの次のような特性が関係していると言われている。
・物事を忘れっぽい
・人の話に集中できず、別のことを考え出してしまう
・場の空気はある程度読めるが、自分の衝動をコントロールできない
・人間関係をコツコツと積み重ねていくのが苦手 など
一方で、人を一瞬で引き付ける魅力をもっているのもADHDの特性。すばらしいプレゼンができ、営業職として成功している方もたくさんいる。その場限りの人間関係では、人見知りせずに非常に明るく社交的にも振る舞える。そうしたADHDの特性は、最初は人との距離をぐっと近づけることもある。しかし、人間関係を継続するには不利。
「私がうまくいくのは、最初だけ。本当の私を知られてしまったら、みんな離れていくんだ」
人に対して距離を置き、冷めていなければ傷つく。本当は誰かと強く結びついていたいと願いながらも、「なぜか」うまく続かない。
こうした問題へのアプローチ方法としてどのようなものがあるでしょうか。
認知行動療法では、勇気を出して、その問題の核心を一緒に見つめる。どうしてうまくいかないのか。その原因をしっかり分析して、できる範囲で解決に取り組む。
「友人の誕生日を覚えていないこと、すぐにメールの返事をしないことが問題ではないか」と、いくつか原因を予想する。それらを一つずつ、どうやったら解決できるかを話し合う。
誰でも人間関係はうまくやりたい。「子どもも小学生になったから、今度こそママ友ときちんと付き合って、人間関係を築かなくては」と決意したのなら、より具体的な方法を考える。
「メールの返事はすぐにするぞ」とか「自分の話を10回したくなったら、9回は我慢して、相手の話を聞いてからにしよう」「自分のことばかり話さずに、相手から聞いたのと同じ範囲だけ話すぞ」と、具体的な決意をする。「誕生日を忘れない方法を誰かに聞いてみよう」と、目上の信頼できる誰かに「人間関係の秘訣(ひけつ)」を聞いてみるのも効果的。