中国レノボ・グループは富士通のパソコン事業を傘下に収める方針を固めた。合弁会社を設け、レノボが過半を出資する方向で調整している。富士通は中国や台湾のメーカーが勢力を拡大するパソコン事業で単独で生き残るのは難しいと判断した。レノボに主導権を渡し、主力のIT(情報技術)サービス事業などに経営資源を集中する。
パソコン世界首位のレノボは事業規模を生かし、部品調達や製造のコストを削減して収益性を引き上げる。
パソコン事業を巡っては、2011年にレノボ主導でNECと日本市場の事業を統合し、レノボNECホールディングスを設立。国内シェア首位を走っている。レノボと富士通はこれとは別会社でパソコン事業を国内展開する。将来、両社が統合する可能性もある。合算すると国内シェアは4割を超える。
レノボ、富士通両社は10月中の合意を目指す。レノボ主導の合弁会社を設立し富士通グループでパソコンの企画・開発・製造を手掛ける部門を移管する案や、富士通のパソコン子会社にレノボが過半を出資する案を検討している。富士通からレノボ傘下には2000人程度が移る見通しだ。
「FMV」ブランドのパソコンを手がける富士通は、15年度に世界で400万台を出荷した。事業の大半を占める国内市場のシェアは2位で、1位のNECレノボ・ジャパングループを追う。ただスマートフォン(スマホ)に押されパソコン市場は縮小しており、採算の悪化で16年3月期は100億円を超える事業赤字となったもようだ。
富士通は今後の大幅な成長が期待できないパソコン事業を非中核と位置付け、2月1日付で分社。東芝のパソコン事業、VAIO(長野県安曇野市)との3者統合を模索したが、合意に至らず、別の枠組みでの再編を模索していた。工場を維持し、雇用を守る案を示したレノボを選んだ。
レノボとNECは共同事業として日本でNECの「ラヴィ」やレノボの「シンクパッド」などのブランドでパソコンを販売している。7月にはNECが49%を出資していたレノボNECへの比率を引き下げ、レノボ主導を鮮明にしていた。
数年前まで年間1500万台規模だった国内パソコン市場は昨年、1000万台程度まで縮小している。スマホやタブレット端末に需要が移っており、今後の成長が見込めない。このためVAIOがソニーから14年に独立するなど、各社は事業の見直しを急いでいる。