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燃やした量以上のプルトニウムを生み出す、「夢の増殖炉」と言われているので、皆さんは、燃料が、倍、また倍と、魔法のように無限に増えていく「夢のリサイクル発電」のように考えているかもしれないが、そうではありません!
燃やした量以上のプルトニウムを生み出す、「夢の増殖炉」と言われているので、皆さんは、燃料が、倍、また倍と、魔法のように無限に増えていく「夢のリサイクル発電」のように考えているかもしれないが、そうではありません!
一つの原子のプルトニウムから、その倍の2つのプルトニウム原子が生まれてきたら、反応前の原子量と、反応後の原子量が明らかに合わず、物理学で、もっとも大切な「保存則」・・・(エネルギー保存の法則、または質量保存の法則)が成立していないことになります。それでは困るので、何か仕組みがあるはずです。いったいどんな仕組みになっているのか。
・・実は通常の「軽水炉」で使われるウラン燃料のうち、燃えるウラン235は全体のほんの3%にしか過ぎないといいます。
残りの燃えないウラン238はそのまま残される。実はこの燃えないウラン238がこのなぞの答えで、このウラン238は通常は核反応しないが、中性子を吸収すると、燃えやすい元素、プルトニウム239へと変わる性質を持っているのです。
このことにより、前述の燃え残るはずのウラン238に発電により生まれた中性子を照射させ、そこからさらにもえる燃料である、プルトニウム239を取り出す。
つまりプルトニウムを無限に燃やしてリサイクルさせるのではなく、”燃え残った”ウラン238の中から燃える燃料であるプルトニウム239を生み出す作業が核燃料サイクルと言われているもの。
・・・ 簡単に言うと、燃料が一度に燃えないので(割合から言うと本当に渋い)、何回かに分けて”反応させる”と言う感じです。これで、大体新聞で報道されていることの謎は解けていると思います・・・。
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高速増殖炉という言葉に隠された悪意についても解説が欲しかったと思います。決して「高速」が「増殖」を修飾する訳ではない筈なのだが、この並べ方だと「増殖が高速に起こる」と一般の方は思う筈です。正確には「高速中性子利用の増殖炉」であり、「高速」が修飾する筈の「中性子」が意図的に消し去れて、その結果、文法上は誤った単語を修飾する結果になっています。これは、確信犯だと思います。
この表現だとプルトニウムだけを燃やして、そこからさらに新しくプルトニウムが生み出される魔法の原子炉だと思われてしまう危惧を感じました。実際には高速増殖炉が生み出せるプルトニウムの量にも限りがあり、また、元になる原料も必要なのです。ただ、本当に実現できれば3000年という様な千年単位の期間利用可能な量が生み出される事が期待できる。
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どこが問題かというと、
「そのプルトニウムを高速増殖炉で燃やすと、投入した以上のプルトニウムが出てくる」という部分。この書き方だとプルトニウムを燃やすと、燃やした以上のプルトニウムを生み出す魔法の原子炉に思われてしまう。エレルギー保存の法則を完全に無視した理論になってしまう。
核分裂を起こしやすいウラン235は天然に存在するウランの0.7%程度にしか過ぎず、約99.3%は核分裂をほとんど起こさないウラン238であるため、軽水炉のエネルギー源として利用できるウランは、ウラン資源の1%にも満たないことになる。しかし高速増殖炉によってウラン238をプルトニウムに転換することができれば、核燃料サイクルが実現し、理論上ウラン資源の約60%をエネルギーとして使用することが出来るため、ウランの利用効率を飛躍的に高くすることができると考えられる。
これまでゴミとして捨てるしかなかったU238を燃料に転換できるので、現在利用可能と思われるウランが60年程度といわれているのが、この技術が実現すれば一気に3000年以上に伸びる事が期待できると言うことです。
(理論上はウラン資源の60%を利用可能になるとの試算から)
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