「はい。子会社にやらせます」

総理「原発が爆発する可能性はないのか」。
班目委員長「ありません」。
総理がしつこく問う。「本当にないのか」。
班目委員長「ありません」。
総理「水素は存在しないのか」
班目委員長「存在しません」。
総理がしつこく問う。「本当にどこにも無いのか」。
班目委員長「ありません。あ、でも、建屋脇の方の・・・・」。
総理「存在するじゃないか!爆発するかもしれないのか??」。
(中略)
テレビのリモコンをとって爆発映像を見せた。
班目委員長が「あちゃぁ」と頭をうな垂れる。総理は厳しい表情。 
(中略)
「失礼します。総理、爆発です」。
さすがに平穏な声では話せなかった。執務室のテレビを爆発映像に切り替える。
大きな噴煙が空高く舞い上がっている。その噴煙の色は、黒い。
昨日の一号機爆発とは、明らかに違う。
総理の第一声。「黒いよな、これ。。。。。」
(中略)
現場の吉田所長から細野補佐官に電話あり。「もうダメかもしれません」との内容。
気丈な吉田所長が見せた、唯一の弱音かもしれない。
(中略)
経産大臣秘書官が「大臣、東電の清水社長からお電話です」と入室。
大臣「いーよ、もう出ない。さっき断ったんだから」と電話取り次ぎを拒否。
たまらず私から「何のお電話だったんですか?」
海江田大臣「なす術ないから、現場から撤退したいって話」。
枝野長官「俺にもきたよ。その電話。もちろん断ったけど」。
初めて聞いた私は驚愕した。現場から東電が撤退したら荒れ狂う原発を誰が押さえ込むのか。
(中略)
東電から撤退の申し出があったことを総理に報告。
総理から「撤退するって、それじゃあ原発はどうするんだ」と一喝。
「自分たちでコントロール出来ないから、他国に処理をお願いするなんてことになったら、
日本はもう国としての体をなしてない」。
現場の吉田所長に電話する。
総理から「撤退との話があるが、まだ出来るか?」
吉田所長「まだ出来ます」。
(中略)
一瞬の沈黙の後、総理が強い口調で発言。
「撤退なんてあり得ないんだ!撤退を認めたらこの国はどうなるんだ!」
「そうだろう!」と原子力安全委員長を指差した。「どうなんだ!」
明らかに威圧的な聞き方だった。
委員長「撤退はありません」。
総理「お前はどうなんだ!」と今度は委員長代理に。
代理「ありません」。
総理「お前は!」と保安院安井氏に指は移った。
安井氏「ありません」
(中略)
清水社長と共に総理執務室に入室。総理の斜め前に座ってもらう。
総理から「まず、撤退はありえない」。
すると、意外なほどあっさりと「はい。。。」と清水社長が答えた。
(中略)
ここで総理が話した内容に関しては、既報の通り。私の記憶の断片は以下。
「撤退は許されない」
「撤退したら、日本はどうなるのか。東日本は終わりだ」
「自国の原発事故を、自ら放棄する事は、国として成り立たない。そんな国は他国に侵略される。」
「撤退しても、東電は潰れる。だからやるしかないんだ」。
「60歳以上の職員は全員現地に行く覚悟でやれ。俺も行く」。
このような内容を怒鳴るように話していた。
(中略)
「絶対に撤退は無い。何が何でもやってくれ」。
その総理の言葉に対する勝俣会長の返答は、返答の持つ意味の重さを微塵も感じさせない程あっさりとしていた。
「はい。子会社にやらせます」。
総理の隣で聞いていて、思わず身をのけぞった。
東電は昔から、「正社員には放射線量の高いところでは作業させないと東電労組」と約束していたし、社員の家族にもそのように説明してきた。だから、危険な作業は当然すべて「下請け(孫請け・ひ孫受け・・・)」企業に押し付けてきた。その経費は莫大であり(真実か否か分からないが東電の支払いは10万円程度/1人・一日と言われた。ただし末端の現場作業員には数千円程度から1万円程度の支給と言われていた。ここに怪しい企業が入り込む余地が大きかったのであろう)、全て総括原価方式で消費者から不当に巻き上げたものだ。このような仕組みで電力天皇制を築いて、現在まで財界を牛耳る有力企業となっていた。
 労組との約束があるから、正社員は危険な労働から隔離されているので、電力労連は「原発賛成・推進派」なのである。当然連合内でも大きな力を持っているだろうから、表立って原発反対を主張できない。
 下請けに放射線量の高い現場で作業させるということは彼らにすれば「当然すぎるほど当然・常識中の常識」であったので、勝俣会長の「子会社にやらせます」は当時、社員として「当然の発言」であったので何も疑問には感ずることなく、自然に出た言葉だろう。