少年の日の思い出 ヘルマン・ヘッセ
「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。」
主人公は少年のころ、蝶の採集に熱中していた。
ある日、珍しい蝶を捕まえた。
いつもは妹にしか見せなかったが、あまりにも珍しい蝶だったので、隣に住むあらゆる面で優等生だが嫌な奴であるエーミールに見せた。
エーミールは蝶の価値は認めたが、ダメなところを重箱の隅をつつくように列挙して、結局は二束三文の値打ちしかない事を明かした。
せっかくの気持ちが冷めてしまう。
またある日のこと。エーミールが、とても珍しい蝶を手に入れたと噂になる。蝶収集の熱に浮かされていた主人公は、蝶が見たくてエーミールを訪ねる。けれど彼は留守だった。
どうしても一目みたいと思った主人公は、部屋へ勝手に忍び込んでしまう。標本の蝶は素晴らしいもので、主人公はつい魔が差して盗み出す。しかし途中で心変わりをして蝶を元に戻す。けれど雑に扱ったため、蝶はバラバラになってしまった。
一度は逃げ出したが、母親に促されてエーミールのところへ行った。正直に話して許してもらおうとする。しかし彼は許さなかった。ところが怒りもしなかった。ただ冷ややかな侮蔑の目で「そうかそうか。つまり君はそういう奴だったんだな」と主人公を軽蔑する。
最後に主人公は、自分の蝶の標本を一つ一つ指で潰していきます。