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やはり、企業は社員に自発的に帰宅してもらうしかない。そのための数少ない方法がこれだ。
(1)残業を申告制にする
(2)申告の手続きを、「家に帰る苦痛」より、大幅に物理的・心理的苦痛を伴うものとする
日本の産業界には、この“最終手段”で成果を上げた経営者がいる。元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長で、元祖・残業削減のプロ、吉越浩一郎氏だ。1992年に同社社長に就任後、19期連続増収増益を達成した吉越氏。それを支えたのは徹底的な生産性向上で、その柱をなしたのが「残業ゼロ」だった。
就任当初は、定時になると自ら社内中を消灯して回り、社員を追い出していた。が、一部の社員は会社に戻って電気をつけ、仕事をしてしまう。らちが明かないと感じた吉越氏が導入したのが残業申告制だった。
「どうしても残業しなければならない場合は許可するが、その代わり、残業した社員には徹底した反省会とリポート提出をしてもらう」。これが仕組みの骨子。申告制自体は既に導入している企業も多いが、トリンプで特徴的だったのは反省会とリポートだ。
■リポートを延々と突き返す
反省会は、残業した翌日から同じ理由で残業が絶対に起きないよう何回でも開かせる。さらに「なぜ、残業をしなければならなかったのか」「どうしたら残業をせずに済むか」について、再発防止策を詳しく書いたリポートの提出も義務付けた。
リポートは1回書いて終わりではない。繰り返し添削して、内容的に大した問題がなくても何度も突き返した。何度も、何度も、だ。反省会とリポートで業務に支障が出ても、意に介さなかった。
社員の中には「理不尽な仕組みだ」「社長はおかしい」と怒り出す者もいたが、そうこうしているうちに少しずつ「こんな大変な思いをするなら、自分の仕事の進め方やプライベートの過ごし方を本気で見直し、残業のない生活をした方が楽だ」と考える社員が増えていったという。
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日本人の残業、元凶は「家に帰りたくない」人たち