配偶者と離別・死別した人は脳卒中を発症するリスクが3割近く高まることが、国立がん研究センターと大阪大学のチームによる長期の追跡調査で分かった。配偶者を失ったことで、食生活や精神状態に変化が生じた結果と考えられるという。
岩手県の二戸など全国9保健所管内に住む40~69歳の既婚者約5万人について、1995年から平均約15年にわたり追跡した。このうち調査を始める5年前に配偶者と同居していた人を対象に、婚姻状況の変化が脳卒中の発症にどのように影響するか分析した。
配偶者と離婚したり死別したりした人は、脳卒中の発症リスクが3割弱上昇していた。男女による差はほとんどなかった。脳卒中の中でも、脳出血のリスクが高まる傾向があった。
原因としては、配偶者を失うことで飲酒量が増えたり、野菜や果物の摂取量が減ったりするなどの食生活の変化が考えられるという。話し相手がいなくなるなど心理的なストレスの上昇も影響しているとみている。
配偶者と別れた後、誰と一緒に住んでいるかでもリスクに差が出た。子供と同居する男女で、発症リスクが高まる傾向があった。一方、親(義理を含む)との同居では、男性は発症リスクが低くなった。女性は逆に高まっていた。
仕事をしているかどうかで分析すると、仕事がない女性の発症リスクが高かった。特に配偶者を失った無職女性のリスクは、配偶者がいて働いている女性の約3倍だった。研究チームは「脳卒中のリスクを減らすには、社会的な環境も考慮すべきだ」と話している。