どうして妻が不機嫌なのかわからない夫
産後クライシス――産後に冷え込む夫婦の愛情
「子どもが生まれてからなぜか妻が不機嫌だ……」「一緒に育てるって言っていたのに、話が違う!」あるデータによると出産後に夫婦の愛情は急速に冷え込み、その後の夫婦生活に致命的なひびがはいってしまうらしい。この現象が「産後クライシス」
育児や家事でたいへんな女性たちは、きっともやもやとした不満とか将来の自分への不安を抱えていると思います。だけど、そのもやもやがどこからくるのかがわからないと、夫に伝えることができませんよね。
自分のもやもやを言語化してもらって、その後にパートナーに渡してもらえたら嬉しいです。
妊娠期に「(配偶者を)本当に愛していると実感する」女性の割合は7割。子どもが生まれた直後の0歳期で45.5%、2歳児期になると34.0%にまで落ち込んでいるんです。一方で、男性も7割から始まるのですが、女性と同じように下がってはいくものの、2歳児期の時点でも51.7%が妻のことを愛していると感じているんですね。
私はこのデータをみても「まあそうだろうな」と思いましたし、同僚の女性記者たちに見せても同じような反応で、「もう子どもがいればいいよね」という会話が交わされていたんですけど、男性の上司たちに見せてみたら「自分たちはこんなにも妻に愛されていないのか……!」と、とてもびっくりしていて。むしろ私たちは「えっ! 夫って妻を意外に愛してたわけ!?」という風に驚いていたんですけど。
「母子家庭になった時期」でもっとも多いのは子どもが0~2歳の時期で、全母子家庭のほぼ3割にのぼります。
出産後に夫への愛情がガクリと落ちて、その後、回復組と低迷組に二極化するんですね。
でも、夫は妻からの愛情をすでに失っていることに気が付いていないんですよ。
出産は女性の生き方を大きく変えるイベントです。この本では産後に身体的危機、精神的危機、社会的危機が訪れると書きました。
身体的危機ですと、とにかく陣痛はひたすら痛くてたまりませんし、しかも生み終わってもずーっと痛いんですね。体力もなかなか回復しなくて、私は出産後に普段なら20分程度で行ける1キロほどの道のりを1時間以上かけてゼエゼエ言いながら歩きました。母乳が詰まると胸は腫れるし、乳首も痛い。朝から晩まで赤ちゃんに手をかけなくてはいけないのでひたすら体力が削がれます。
精神的にも不安になります。ちゃんと育児ができるか不安になりますし、泣いている赤ちゃんがどうして欲しいと思っているのかわからない。私は辛い物が大好きなのですが、辛い物を食べると母乳が不味くなるのか、赤ちゃんがおっぱいを飲んでくれない。すぐにペッと吐きだされてしまう。自分の時間なんてとうてい持てませんから、すべての時間を赤ちゃんにあわせて過ごさなくてはいけません。
そして、いつになったら仕事に戻れるんだろうという社会的な不安もあります。育休が終わって仕事ちゃんと戻れるのか。保育園に入ることはできるのか、子育てをしながら働くことはできるのだろうかという不安。しかもいまは少子化ですから、同じくらいの赤ちゃんを育てている方が近所にいないので、相談することもなかなかできない。友達に子どもがいなければ、話題もすれ違って友達とも疎遠になってしまいます。
そんなたくさんの不安の中で、夫がほろ酔いで上機嫌に帰ってきたら……。たいしたことじゃないとお思いなのでしょうが、いろいろなものが積み重なっている妻の怒りが爆発してしまうのも仕方ないと思います。妻の怒りが爆発しなくても、夫からしたら、なぜかわからないけど不機嫌な妻がいる家には帰りたくなくなってしまって、つい仕事帰りに一杯飲みに行ってしまう。これってお互いにとっても不幸なことですよね。
本当に問題なのは家事ではなくて、夫と妻が、しっかりお互いのことを話し合えるかどうかなんですよ。その最初の試練が産後なんです。