米国では、2002~2013年の間に、小児1型糖尿病の有病率が上昇し、患児数が約60%増加していることが「Diabetes Care」オンライン版に12月17日掲載の論文で報告された。既に、2009年までの8年間で小児の1型および2型糖尿病有病率が急上昇していることが報告されているが、その後減少に転じている2型糖尿病とは対照的に、1型糖尿病では有病率の上昇が続いているという。
成人に多くみられる2型糖尿病と異なり、1型糖尿病は肥満とは関連しない自己免疫疾患で、小児期に診断されるケースが多い。この1型糖尿病では、インスリンを毎日注射したり、インスリンポンプを埋め込む必要があるなど日々の管理が難しいうえに、神経障害や腎不全、心疾患などの長期的な合併症リスクも高い。
米JDRF(旧・青少年糖尿病研究財団)のSteven Griffen氏(本研究には参加していない)は、米国で小児1型糖尿病が増えていることは憂慮すべき事態だが、この増加傾向は世界中でみられており、驚くべきことではないとしている。しかし、「この小児1型糖尿病の増加の原因は不明で、現時点でこの疑問に対する答えはもちあわせていない」と付け加えている。
米ボストン大学公衆衛生学部のSusan Jick氏らは、米国の民間医療保険請求データベースを用いて、2002~2013年における18歳未満の糖尿病と糖尿病性腎症の有病率を調査した。その結果、糖尿病と診断された児は9万6,171人、糖尿病性腎症と診断された糖尿病患児は3,161人で、小児1型糖尿病の年間有病率は、2002年の1,000人あたり1.48人から2013年には2.32人に増加していた。
Griffen氏は、小児1型糖尿病の増加を説明する理由の1つに「腸内細菌叢」を挙げている。一部の研究者は、腸内細菌叢の多様性の減少が、遺伝的素因とともに小児の1型糖尿病発症を引き起こしている可能性があることを示唆している。この腸内細菌叢の多様性を失わせる要因には、抗生物質の使用や加工食品の摂取、帝王切開のほか、ある種のウイルス感染により異常な免疫応答が生じるという説もある。
一方で、Jick氏によると、2型糖尿病については将来の見通しが明るいという。研究期間の前半では小児の2型糖尿病患者数は増加していたものの、後半には減少傾向がみられており、その有病率は2006年の1,000人あたり0.56人から2013年には0.49人に減少していた。同氏によると、米国では就学前の小児の肥満率が低下しており、これが小児2型糖尿病の減少に寄与している可能性があると説明している。
なお、今回の研究では、糖尿病に関連した腎不全の有病率も増加していた。小児糖尿病患者における腎不全の年間有病率は、2002年の1.16%から2013年には3.44%に上昇していることがわかった。Griffen氏は、この腎不全の有病率の増加については、医師が腎不全のスクリーニングを行う頻度が高まったことによるものと推察している。