辺野古の環境監視4委員、業者側から寄付・報酬
2015年10月19日03時03分 朝日新聞
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画で、国が進める工事を環境面から監視する専門家委員会の委員3人が、就任決定後の約1年間に、移設事業を受注した業者から計1100万円の寄付金を受けていた。他の1委員は受注業者の関連法人から報酬を受領していた。朝日新聞の調べでわかった。
4委員は取材に対し、委員会の審議に寄付や報酬は影響していないとしている。違法性はないが、委員の1人は受領を不適切だとして、委員辞任を検討している。
この委員会は「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会(環境監視委)」。沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)・前知事が2013年12月、辺野古周辺の埋め立てを承認した際に条件として政府に求め、国が14年4月に設置した。普天間移設事業を科学的に審議し、工事の変更などを国に指導できる立場の専門家が、事業を請け負う業者側から金銭支援を受ける構図だ。
ログイン前の続き朝日新聞は全13委員について、所属大学・法人に経理書類を情報公開請求したほか、各委員に金銭支援について取材した。その結果、委員長の中村由行・横浜国立大院教授ら3人が、辺野古の護岸建設工事や環境調査業務を受注する建設会社やコンサルタント会社から委員就任決定後に寄付金を受けていた。寄付の大半は、業者の事業受注後に実施されていた。
寄付金は研究助成を名目に業者から大学を通じて寄せられる。使途を業者側に報告する義務はない。3委員は取材に、研究室の人件費や備品購入に充てると話した。
委員の一人の原武史・全国水産技術者協会理事長は、辺野古事業を多数受注する建設環境コンサルタント会社(東京都世田谷区)の会長が理事長を務める環境NPO法人(同)の理事をしている。NPOが都に提出した事業報告書によると、同社はNPOに出資し、原氏はNPOから報酬を受けている。原氏によると、金額は年間200万円以上だという。
4委員は取材に「専門家として厳しく指摘している」「寄付金は辺野古と関係ない」などと説明。資金を出した業者側は「学術的な目的」などと話している。
沖縄の大学所属・出身の4委員は受注業者からの金銭支援はなかった。沖縄防衛局によると、委員に対して、金銭支援について尋ねていないという。
環境監視委は海洋環境や生物を専門とする大学教授らで構成。初会合は14年4月で、これまでに計5回開かれ、ジュゴンの保護やサンゴの移植を協議。移設計画は本体工事前の準備作業の段階だが、環境監視委は本体工事完了後の調査まで担うとされ、県は「確実に環境保全措置を実施させるため」と位置づける。会議は非公開で、議事要旨が事後に公表されるものの、発言者名は委員長以外は伏せられている。
普天間移設計画では、翁長雄志知事が10月13日、仲井真前知事が出した埋め立て承認には瑕疵(かし)があったとして、承認を取り消した。政府は手続きに問題はないとして対抗措置をとり、今秋にも埋め立て工事に入る構えだ。環境監視委は6月以降、開催されていない。(大谷聡、泗水康信)
■透明性の確保が必要
研究者倫理に詳しい安部誠治・関西大教授(公益事業論)の話 金銭を出す企業側に何らかの期待がないはずはない。一方で、研究者にとって外部からの資金の重要性は増している。狭い業界の場合、実力があって著名な研究者に企業からの資金が集中する傾向がある。
辺野古のように社会的に注目を集める事業の委員会の場合、金銭支援はすべて公開するルールが必要だ。その上で、会合については報道陣の取材を許可し、議事録もすべて公開する。透明性が確保されればチェック機能が働く。もちろん研究者にも、委員就任後には該当する業者からの金銭は受けない姿勢が必要だ。
重要な事業でお墨付きを得るためだけに委員会を利用するようなことは望ましくない。