この先子供が生まれて、経済的にも時間的にもいままでよりずっと制約のある暮らしになっても、それなりに「別にいっか」と思えると思うんだけど、それは二十代の間に好きなことをやって好きな場所に住んで自由な生活を謳歌していたからだと思う、一人暮らしをしていた頃は、週に一回ライブを観に行って、あるいは週に一回誰かと飲みに行って、週末は恋人とデートをして、年間五十枚CDを買って、好きなだけ本を買って、街中に住んでいたから暇なときは近所の好きなお店にいつでも遊びにいけて、家にいてダラダラしていても誰にも文句言われない、と

"この先子供が生まれて、経済的にも時間的にもいままでよりずっと制約のある暮らしになっても、それなりに「別にいっか」と思えると思うんだけど、それは二十代の間に好きなことをやって好きな場所に住んで自由な生活を謳歌していたからだと思う、一人暮らしをしていた頃は、週に一回ライブを観に行って、あるいは週に一回誰かと飲みに行って、週末は恋人とデートをして、年間五十枚CDを買って、好きなだけ本を買って、街中に住んでいたから暇なときは近所の好きなお店にいつでも遊びにいけて、家にいてダラダラしていても誰にも文句言われない、という生活だったけど、そのおかげでいま、国道沿いにブックオフとユニクロとマクドナルドが並んでいるだけの「ザ・郊外」みたいなところに住んで、家で夫のためにお菓子を作りお腹の子のために手芸をする、みたいな気持ち悪い行動をしていても毎日楽しいし幸せ、と思えるのであって、二十代の好き放題やる期間がなくていきなり「ザ・郊外」の家で「君は家で子供のためにおやつを作ったり手芸をしたりしていておくれ」などと言われたら死んでしまうだろう。

だから若い娘を捕まえて「早いうちに子供生んどけ」というのは酷な話だなあと思う。若い娘だって大半は「そのうちいつかは」と思っているんだろうけど、「いまは他にやることがあんだよ」っていうことだろうし、やりたいことが満たされないまま子供を持つと「自分ができなかったことをこの子にはやってほしい」みたいな話になって子供が迷惑するし、そうそう単純な話ではない、現状妊娠・出産・育児にまつわるリスクを圧倒的に背負うのは女のほうで、本来男にも分業可能な育児の部分すら母性神話振りかざして「やはり育児はお母さんがしないと」みたいなこと言うて回避しようとする奴が多いのに、知らんおっさんから気軽に「女は若いうちに子供を生むべき」とか言われたらムカつくに決まってる。でも佐野洋子が「女は子供を生んどれ」って言ってたことについては、佐野洋子が言うんだからそうかもなあ、という気持ちになってくるから、えこひいきしてすみません……。 "