かつて橋本龍太郎首相が『米国債をこれ以上購入したくない』と言っただけで、政治生命を失った

採録

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アメリカが輸入だけで食っていけるのはなぜか。通常、貿易赤字の国は支払い超過で国力を落とし、経済的にも貧困化していく。当然、外貨を稼ぐどころではない。
ところがアメリカだけは、外貨を稼ぐ必要のない国である。自国通貨のドルが世界の基軸通貨であることをいいことに、ドルを刷るだけでいくらでも、外国の物品を輸入することができる。その『打ち出の小槌』の役割を果たしているのが中央銀行のFRBである。
しかしこのことに頼りすぎると、古代ローマ帝国の属州が富を奪われて荒廃していったように、世界中で困窮化する国が出てくるから、いつまでもそれを続けるわけにはいかなくなる。
アメリカの『打ち出の小槌』は、アメリカ政府が米国債を発行し、その米国債を中央銀行のFRBが購入し、その対価としてアメリカ政府にFRBがドルを支払うという手続きを取るが、いつまでもこんなことをしているとその詐欺的手法に他国から批判が出るから、米国債を買い取ってくれる相手をFRBから別のものに変更する必要が出てくる。
巷で囁かれていることは、この役割を与えられたのが日本ではないかということだ。アメリカはリーマン・ショック以来、QE1・2・3と量的金融緩和(ドルを刷ること)を続けてきたが、その終了を発表したのが、今年の10月30日(日本時間)であった。そしてその翌日の10月31日に日本が突然行ったことが、日本銀行による追加の量的金融緩和である。つまりアメリカが量的金融緩和を終了すると同時に、日本が追加の量的金融緩和を行った。このことの意味は明らかであろう。それ以降、アメリカの消費はますます堅調である一方、日本の消費はなかなか伸びない。つまり量的金融緩和を終了した消費が落ち込むはずのアメリカの消費がますます堅調で、逆に追加の量的金融緩和を実行し消費が伸びるはずの日本の消費がなかなか伸びないのである。
日本の米国債保有残高はいわば聖域でその実態はつかめない。しかしかつて橋本龍太郎首相が『米国債をこれ以上購入したくない』と言っただけで、政治生命を失ったように、このことにアメリカからかなりの圧力がかかっているのは事実であろう。
アメリカは日本から『ただ金』を借りている。米国債は買ったら最後、いつまでたっても返済されない。そこでアメリカが『返済してもらいたかったらこの条件を飲め』と民主党政権下でアホ菅首相に提示したのが、TPPである。いや順番が逆で、アホ菅直人はTPPという条件を飲むことで、不正選挙でアメリカから首相にしてもらったのだ。この時に民主党は終わった。私はこの政党にはあと10年は票は集まらないと思う。日本の政治的低迷はこの時から始まった。
通常、お金を貸した方が、借りた方よりも強いが、日米関係だけはこのことが逆である。首相になるために、こんな変な日米関係を認めたのが菅直人である。この人物はいまだに醜態をさらし続けている。
アメリカもさすがに、働かずに消費することに不安を感じている。その現れがTPPである。しかし日本にとってこれは容易には飲めない代物である。これはどこまでもアメリカに有利で、日本に不利な代物である。これはアメリカルールの押しつけである。アメリカはそうしなければ、自国の物品を輸出することができないのだ。アメリカの産業はそれほど弱っている。
それほど弱い産業構造のなかでなぜアメリカの消費が伸びているのか。この消費の伸びは給料の伸びとは無関係である。それはまた借金する量が増えただけである。アメリカでは最近またサブプライムローンの貸し出しが増えている。リーマン・ショックの引き金になったあのサブプライムローンである。これは返済能力のない低所得者に貸し出す住宅ローンである。日本人は身の丈に合わない借金はしないが、アメリカ人はそんなことにはお構いなく借金をする。彼らは貯金があるから消費をするという発想をしない。貸す人があればいくらでも借金をして消費をする。誰でも借りられるクレジットカードも普及しているから、そのことは容易い。
現在日本の金融機関にダブついたお金は、その使い道がなくて困っているが、それは日本人が不用なお金を借りようとしないからである。ところがアメリカ人は逆でダブついたお金があればすぐに借りてしまう。貸す方も無責任で、返済能力があるかどうかにかかわらず容易く貸してしまう。経営陣も短期的に利益を上げることばかり考えているから、ツケは誰かに回せばいいと考えている。そのときには自分は役職を離れているから、『あとはしらない』というわけだ。
しかもアメリカでは経営難に陥った金融機関は最後は公的資金によって救済される。どうせ救済されるなら、それまでに甘い汁を吸った者の勝ちだ、というわけだ。そういう意味ではすでにアメリカの金融モラルは崩壊している。
日本人は身の丈に合わない借金はしないが、アメリカ人はそんなことにはお構いなく借金をする。だから日本の金融機関でダブついたお金はアメリカに回る。そして低所得者のアメリカ人に貸し出される。これがアメリカの消費が堅調な理由である。そしてそのことを『アメリカが買ってくれる』と日本は喜んでいる。
しかしこれ、日本 → アメリカ → アメリカの低所得者、とお金が流れているだけだ。日本は返済能力のないアメリカ人にお金を貸して、彼らに日本製品を買わせて喜んでいるだけだ。彼らに貸したお金はもどってこない。日本政府がアメリカ政府に貸したお金も戻ってこないし、日本の金融機関がアメリカの金融機関に貸したお金も戻ってこない。アメリカ人は他人から借りたお金で豊かに暮らし、日本人は自分で稼いだお金をアメリカ人に貸して、働き続けている。そしてそれを喜んでいる。
でも貸したお金は戻ってこない。それはどういう形で現れるか。銀行預金に利子がつかない、給料が上がらない、年金が減らされる、消費税が上がる、そういったそれと気づかない諸々の形でカモフラージュされる。こんなマイナス要因ばかり発生するから、日本の消費は伸びない。当然物価も上がらない。物価が上がるというアベノミクスはウソである。上がるのは外国人が買っている株だけである。しかしその資金源も日本から借りたものである。
現在日本で起こっている消費の低迷は、日本人のお金が外国人によって使われているという状況のなかで発生した、起こるべくして起こったことである。

2015-07-16 22:45