“あなたの妻は本当に大丈夫?ドラマの「平日昼顔妻」に賛否両論
うちの妻に限って――。
そんな思い込みが突然、崩壊する日がくるかもしれない。
?「平日昼顔妻」という言葉をご存知だろうか。流行のきっかけになったのは、フジテレビの情報番組だ。同社のホームページによると、「平日昼顔妻とはフジテレビの情報番組『ノンストップ!』が、ルイス・ブニュエル監督、カトリーヌ・ドヌープ主演の映画『昼顔』から着想した造語で、夫を会社に送り出した後、平日昼に別の男性との恋に落ちる主婦のこと」だという。
上戸彩さん主演のテレビドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)でも平日昼顔妻たちが扱われ、ビジネスマンの間でも大きな反響を得ている。ドラマの内容には賛否両論があるが、「平日昼顔妻」が話題になるにつれ、「自分の妻は大丈夫だろうか?」と不安になっている男性も多いのではないか。
言うまでもなく、不倫は許されない行為だ。仮に不倫がバレれば社会的な信用を落とすだけではなく、離婚や慰謝料の請求などといった深刻な事態に発展する可能性もある。もちろん、家族の心も深く傷つけてしまう。
しかし、世の中から不倫が消えることはない。いつの時代にも不倫は存在し、危険だとわかっていても、その誘惑に抗えない男女は後を絶たない。ビジネスマン読者が働く職場でも、社内不倫の話題の1つや2つは耳にしたことがあるだろう。
人はなぜ、不倫に手を出すのだろうか。また、そもそも我々の身近でそんなドラマのような現象が本当に頻繁に起きているのか。本来、色恋沙汰は男女の両面から論じられるべきものではあるが、今回は「平日昼顔妻」の話題化をフックに、主に女性目線の分析を交えながら、不倫の社会的背景について考えていきたい。
全国で20%以上が経験あり驚くべき不倫・浮気の実態
まずは、不倫の実態を表わす具体的なデータから見ていこう。
?『昼顔』の番組ホームページには、不倫についての意識調査が掲載されている。それによると、「不倫は絶対に許せないか」を聞いた質問では、65%が「そう思わない」と回答している。想像以上に“不倫容認派”が多いことがわかる。
また、「身近に不倫している(したことがある)人がいるか」という質問には68%が「いる」、「パートナー以外の異性にときめいたことがあるか」という質問に関しては「ある」が82%にも及んだ。異性にときめくくらいなら誰にでもあるかもしれないが、身近に不倫経験者がいる人の割合が7割近いというのは驚きだ。
もはや不倫は密事などではなく、公然と世の中に存在する男女の営みになっているのかもしれない。
さらに詳細な調査データが、コンドーム製造メーカーの相模ゴム工業から発表されているので、紹介したい。この調査は「ニッポンのセックス」と題され、2013年1月に実施された。全国の20~60代の男女1万4100人から回答を得ている。
同調査によると、交際相手や結婚相手以外に性的パートナーがいる割合は、全体で21.3%。都道府県別では島根県(26.5%)がトップで、富山県(26.2%)、三重県(25.6%)、兵庫県(25.4%)、東京都(25.0%)と続いている。一番少ない件は秋田県(15.4%)だった。
ちなみに、浮気・不倫している女性の割合は16.3%で男性よりは低い。女性の年代別で最も多いのは40代で19.0%。少ないとはいえ、5人に1人の割合で浮気・不倫をしていることになる。このうち「性的パートナーが1人いる」と回答した割合は17.9%だが、0.7%は「複数の相手がいる」と回答している。
浮気・不倫相手との出会いの場所については、「同じ会社」が21.4%で1位。2位は「友人の紹介」(16.4%)、3位は「友人」(13.9%)となっている。さらに、SNSやソーシャルゲーム、出会い系サイトなどのインターネットを介した出会いも全体の12.0%となっており、気軽に人とつながれるインターネットの特性を悪用した不倫も蔓延っていることがわかる。
一方、既婚者の55.2%が「セックスレスだと思う」と回答していることにも注目したい。家庭内で満足できない欲望を、外の恋愛に向けているということなのかもしれない。
中には「両親公認」という強者も妻たちはなぜ家庭をリスクに晒すのか?
では、実際に妻たちはどのようにして、またどんな理由で不倫をしているのだろうか。筆者の周辺調査でわかった事例をいくつか紹介しよう。
子ども2人を育てる兼業主婦の女性(38歳)は、夫とバツイチ同士で結婚した。しかし、夫は生活費を家庭に入れず、そんな不満からか、1人目の出産直後から同年代の男性と不倫をスタートした。お金に困っていたため、男性に日用品を購入してもらっていたこともあったという。
驚くべきは、男性の存在を自分の両親に知らせていたということ。子どもを連れて両親と旅行に行く際に、空港までクルマで送ってもらったこともあるという(夫は旅行に行っていない)。
男性とは2人目の妊娠とともに別れたが、現在は職場で知り合った男性と不倫中だという。彼女いわく、「結構みんなやっていること。『えっ、この人が?』と思うような地味な女性でも、不倫をしていることがある」のだとか。
「マリッジブルーでついズルズルと」満たされない30代専業主婦の本音
お次は専業主婦(32歳)のケース。
彼女は2年前に結婚して、まだ子どもはいない。夫は団体職員で、飲み会がある日以外は定時で帰社し、家に帰って来る。そんな彼女の不倫相手は、高校生時代の同級生だ。恋人として付き合ったことはないものの、大学時代に同窓会で再会し、酒の勢いもあって肉体関係を持った。それ以後も何度か肉体関係を持ったが、数年に1回程度の軽い付き合いだったという。
そんな浮気相手と継続的な関係を持ち始めたのは、結婚する3ヵ月ほど前のこと。またもや飲み会で再開し、肉体関係を持ってしまった。しかし、この時期はマリッジブルーだったこともあり、ずるずると長引いてしまった。結婚を機に関係を切ろうとしたが、ちょうど彼の家が2駅先の近所にあることもあり、夫がいない隙に密事を重ねている。
帰りの早い夫の目を盗んで不倫できるのには、理由がある。不倫相手がサービス業に勤務しており、平日休みなのだ。もっぱら彼女のほうから彼の家に行くことが多く、たまに気晴らしでラブホテルに行く。回数は週1回ほどで、夫とはセックスレスだという。
彼女はこう語る。
?「今のところ夫とは別れるつもりはないけど、そろそろ子どもが欲しいのでセックスレスだということが心に引っかかっている。不倫してしまうのも、それが原因かも……」
不倫が先か、セックスレスが先か。ニワトリとタマゴのような話だが、彼女にとっては夫との夜の生活の不満が自分を不倫に向かわせていると分析しているようだ。
お次に、今まさに不倫を始めたという専業主婦(34歳)。結婚5年目。夫が鬱(うつ)になり休職したことがきっかけで、仕事復帰のために就職活動を始めた。まさにその過程で出会ったのが、現在の不倫相手だ。世間体を考えると離婚したくないため夫と別れる気はないが、不倫相手のことが本当に好きなため、こちらとも別れる気はないのだそうだ。
最後に紹介するのは、33歳の兼業主婦。結婚10年目で子どもはおらず、今後もつくる予定はないという。結婚3年目頃から、独身男性と不倫をスタートし、今年で7年目に突入する。一方、彼女いわく夫も不倫しており(外出時に、バッグの中にコンドームが入っていたことから想像)、彼女の不倫に感づきつつも文句を言うことはないという。
しかし、夫とは頻繁に旅行に行くほど仲がよく、お互い別れるつもりはないとのこと。「夫婦とは家族を作り、外で恋愛する」といった感覚なのだという。
不倫推奨サイトのCEOが語った真実不倫は結婚を救う「必要悪」なのか?
これまで見てきたように、一口で不倫と言っても当事者たちの感覚は様々だ。各種のデータや当事者の声からもわかるとおり、不倫は決して特殊なことではなく、普通に暮らしている我々一般人にも起こり得る、ごく普通の問題だということもわかった。
先ほど、インターネットを介した不倫についても触れたが、昨年カナダ発の不倫推奨SNS「アシュレイ・マディソン」が日本に上陸したことが話題になった。同SNSは世界で会員数を伸ばしており、日本でのサービス開始時に多くのメディアが注目し、物議を醸したことは記憶に新しい。
昨年7月に筆者が取材した際、ノエル・バイダーマンCEOはこうコメントした。
?「人は、肉体的及び精神的ニーズが満たされないために浮気をします。伴侶と別れることもできますが、実際には、別れるのはとても難しい。そして、家庭も壊したくないと多くの人が考えています。ですので、そのニーズを結婚生活外で求めるのです」
さらに、「日本は保守的な国であるにもかかわらず、全ての人が不倫が存在することを認識しています。日本では、バレない限りは『不倫が結婚を救う』ということが、理解されているように思えます」とも。
つまり、バイダーマン氏は「不倫が家庭生活を維持することに一役買っている」と言いたいのである。
ドラマのヒットでもう一度考えたい絶えることのない不倫との向き合い方
バイダーマン氏の意見が正しいかどうかは別として、現に不倫は存在するし、その存在を否定する人もいない。現に、日本における「アシュレイ・マディソン」のユーザーは、すでに30万人を超えたという報道もある。不倫が“必要悪”として認知されているという氏の見立ては、当たらずとも遠からずといったところだろうか。
日本人の結婚・恋愛観の「ひずみ」が少なからず見て取れる、こうした現象を是とするか非とするかは、人それぞれだろう。
?「平日昼顔妻」のヒットをきっかけに、期せずして不倫という現象に注目が集まる今、男性も女性もいま一度その意味について考えてみてはどうだろうか。少なくとも一介のビジネスマンとしては、平和な家庭生活に潜む落とし穴に注意し、夫婦円満な人生を歩みたいものである。”
2015-07-08 10:12