“同じことをしながら、自分自身のしたことなら許すことができ、自分以外の者のしたことなら許すことができない。これがわたしたち人間の、誰もが持つところの真実の姿なのである。自分のしたことと、他人のしたことが同じであっても、そこに軽重ができ、大小ができる。これをわたしは「人は二つの物差しを持つ」と、常にいっているのだが、これは考えてみると、全く許し難い根性だといわなければならない。単に、二つの物差しを持っているだけではなく、これが、夫、わが子、しゅうと、他人、友人、実の親などと、相手によって、わたしたちの物差しは適当に変わるのである”
孤独のとなり / 三浦 綾子