新型コロナ対応の「新宿モデル」 新宿区、「コロナ検査スポット」「病状に応じた受け入れ」体制整備  東京都新宿区は4月15日、記者会見を開き、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)医療提供新宿モデル」をスタートさせることを公表した。PCR検査を行う「新宿区新型コロナ検査スポット」を、国立国際医療研究センター(NCGM)病院に委託して、区医師会などと協力しながら運営するとともに、軽症から重症まで病状に応じた受け入れ体制の構築を目指す。  新宿区、国立国際医療研究センター病院を含む区内の8病院、新宿

新型コロナ対応の「新宿モデル」 新宿区、「コロナ検査スポット」「病状に応じた受け入れ」体制整備
 東京都新宿区は4月15日、記者会見を開き、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)医療提供新宿モデル」をスタートさせることを公表した。PCR検査を行う「新宿区新型コロナ検査スポット」を、国立国際医療研究センター(NCGM)病院に委託して、区医師会などと協力しながら運営するとともに、軽症から重症まで病状に応じた受け入れ体制の構築を目指す。
 新宿区、国立国際医療研究センター病院を含む区内の8病院、新宿区医師会、薬剤師会など関係者がタッグを組み、迅速な検査体制の確立と、同病院をはじめ、重症患者を受け入れる病院の負担軽減を図り、“医療崩壊”を防ぐのが狙い。
 COVID-19の感染者の急増に伴い、ベッドが逼迫する中、注目される先駆的なモデルと言える。早ければ来週からのスタートを目指す。新宿区は現時点では3カ月間の運営を想定、1カ月当たり約5000万円の予算を用意する。
 会見した新宿区長の吉住健一氏は、「区内の感染者数は、3月後半までは1日20人弱だったが、3月後半から急増し、4月13日時点では177人だった。これ以上、感染者数が増えると“医療崩壊”につながる」と危機感を募らせ、COVID-19の感染拡大に伴い、迅速な検査体制と病状に応じた診療体制の構築が必須であると強調。
 国立国際医療研究センター理事長の國土典宏氏も、「新宿モデル」で重症患者の治療に専念できるようになるとし、「“医療崩壊”が懸念される中で、主な病院との協力の下、モデルを構築できることを大変うれしく思っている。こうしたモデルが他の地域に広がっていけば」と期待を込める。同センター病院では、3月上旬から「発熱外来」を設けて、COVID-19に対応してきた。最近の1日の外来患者は100人超で、うちPCR検査陽性は3割を超すという。入院患者は現時点で40人強、人工呼吸を必要とする重症患者は6人、ECMOで治療中の患者は2人。「ほぼフル稼働し、入院はキャパシティーがギリギリの状況」。
 新宿区医師会長の平澤精一氏は、「感染者数の増加で、発熱外来を維持することが難しいと聞いた。国立国際医療研究センター病院に重症患者に専念してもらうために、それに代わるシステム構築に私たちが協力することが必要だと判断した。このモデルでは、かかりつけ医がスタートラインとなる。かかりつけ医の役割が非常に重要になっている」と気を引き締める。同医師会では、「新宿モデル」に協力要請する医師を手挙げ式で4月14日から4月17日まで募集中だ。
 対象は新宿区内の医療機関を受診した紹介患者
 「新宿モデル」は、従来の帰国者・接触者センター、外来とは別に運営、COVID-19感染者の増加に備える。帰国者・接触者センターは保健所対応だが、「新宿モデル」は新宿区内の医療機関が最初の窓口となる点で異なる。「(帰国者・接触者センターの方式では)まず保健所に相談していただいて、(COVID-19の)症例定義に該当するか否かを検討し、帰国者・接触者外来に紹介するという流れだったので、多少手間がかかった。新宿モデルでは、医療機関を受診した患者が紹介状を直接持ってくれば検査を受けられるようになるので、簡略化される」(新宿区保健部長、保健所長の高橋郁美氏)。
 平澤氏が言及したように、「新宿モデル」のスタートラインは、新宿区内の医療機関。ここを受診し、COVID-19疑いとして紹介された患者が、「新宿区新型コロナ検査スポット」でのPCR検査の対象だ。現行の「発熱外来」を同スポットに変更。「発熱外来」には4ブースあり、現在は午前中のみの運営で1日最大100人程度の対応が可能。これに対し、「新宿区新型コロナ検査スポット」は、午後の運営も想定しており、最大200人程度に対応できる見通しだという。参加8病院、新宿区医師会が協力し、「医師、看護師、臨床検査技師」というチームを複数構成、運営にあたる。職種によって異なるが、医師の場合、日当は4万円を予定。
 例えば区内の医療機関を受診した患者の場合、翌日には「新宿区新型コロナ検査スポット」で検査を受けられる見通し。午後も運営するようになれば、当日中の検査も可能になる。症状が重い患者はその限りではなく、即検査、入院も当然ながらあり得る。
 ホテル等での療養にも区医師会らが参画
 現在はPCR検査で陽性になれば入院対象で、その調整は保健所が行っている。東京都では、COVID-19用にホテルの確保を進めており、4月17日からリスクが低いと判断すれば、最初からホテルや自宅での療養とし、病床に余裕を持たせる予定だ。「新宿モデル」では、病状に応じた患者の振り分けも、保健所と参加8病院、東京都が協力して行う。「今は、入院調整が困難な状況になっている。ベッドコントロールも総動員でやっていただければ、保健所は疫学調査などにより力を注ぐことができる」(高橋氏)。
 ホテル等での療養は、これまでは退院後の経過観察者が対象で、保健所が日々健康管理を行っている。今後は最初から入院せずに自宅等で療養する患者も加わり、区医師会などが協力して、診療などにあたる。「軽症と判断されても、重症化する恐れがある」と平澤氏は述べ、医師が関与する重要性を指摘する。