“「近寄るな、離れて見ろ」。これは彫刻を制作する上での常識だ。制作に熱心になりすぎてつい近寄って作品を見てしまうから、少し離れて作品を眺めつつ仕上げていくのが良い作品を創るポイントだという。それは彫刻だけではなく絵画も同じである。結局、人はある一定の距離でしか絵画や彫刻は見ないし、ある程度の距離があるほうがより美しく見える。 そう、それは絵画や彫刻だけに限った話ではない。小説にも適度は距離があるほうが、より美しく見える。主人公による手記という手法を使って、リルケは小説と読者のあいだに適度な距離を創った。そ

“「近寄るな、離れて見ろ」。これは彫刻を制作する上での常識だ。制作に熱心になりすぎてつい近寄って作品を見てしまうから、少し離れて作品を眺めつつ仕上げていくのが良い作品を創るポイントだという。それは彫刻だけではなく絵画も同じである。結局、人はある一定の距離でしか絵画や彫刻は見ないし、ある程度の距離があるほうがより美しく見える。
そう、それは絵画や彫刻だけに限った話ではない。小説にも適度は距離があるほうが、より美しく見える。主人公による手記という手法を使って、リルケは小説と読者のあいだに適度な距離を創った。そうすることで、見るべきものしか見ないのではなく、見えていないものを見ることができるようになる。そのようにして客観視できる空間を創りだしていたように思う。”