アスペルガー 防衛 破壊される

アスペルガー障害の人の手記を読んでいると
症状が一時的に改善したことを
白黒だった世界がカラーに見えるような変化と例えている
つまり
人の心が見えるようになったということなのだが
その人の場合、
それまで、自分には人の心が見えていないことがよくわからなかったし
普通の人たちは人の心がはっきり見えているのだと想像もできなかった
しかし
人の心がはっきり見えるようになって
普通はこのようにはっきりと見えているのだと知った
そこまでは良かったのだけれども、
人の本当の心は、それまで考えていたよりも、
卑しくて、残酷で、弱くて、冷たかった、要するに悪いものだった、
そのことを認識したあとで、
症状はもとに戻り、また人の心が見えなくなった
それ以降、それまで抱いていた人間の心への信頼や肯定は薄くなった
これを現実認識が前進したと言うべきなのか、
あるいは、人の心が見えたその時期に、偶然、質の良くない人と出会っていたのか、
またたとえば、物事を認識できないときには、人間は自分に都合の良いように解釈しているものだから、ある程度必然的に、それまでの自分に都合の良い幻想は破壊されるということなのか
神経学で言う失認という状態に近いと思うのだが、一生、失認のままで生きたほうが、
「防衛」を破壊されないままで生きられるから有利なのではないかとも思われる
新しい「防衛」が形成されないうちに、また元の状態に戻ると、「防衛」を失うだけに終わるのではないだろうか