テストステロン使用で性欲(p=0.13)、勃起機能(p=0.10)、総性機能スコア(p=0.09)の差は認めなかった

テストステロン 性欲(p=0.13)、勃起機能(p=0.10)、総性機能スコア(p=0.09)の差は認めなかった
テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMAのイメージ
 テストステロンの長期投与がアテローム性動脈硬化に及ぼす影響は確立されていない。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShehzad Basaria氏らは、今回、TEAAM試験において、加齢に伴いテストステロン値が低下した高齢男性に対するテストステロンの3年投与は、アテローム性動脈硬化を進展させず、性機能や健康関連QOLを低下させないことを示した。近年、米国ではテストステロンを使用する高齢男性が増加しているが、長期投与のベネフィットやリスクは明らかではなく、心血管イベントとの関連については相反する結果が報告され、前臨床研究でも矛盾するデータが示されているという。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。
長期投与の影響をプラセボ対照無作為化試験で評価
 TEAAM試験は、高齢男性における潜在性のアテローム性動脈硬化の進展に及ぼすテストステロン長期投与の影響を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Solvay Pharmaceuticals社などの助成による)。
 対象は、年齢60歳以上、朝(午前7~10時)の総テストステロン値が低値または低~正常値(100~400ng/dL)あるいは遊離テストステロン値<50pg/mLの男性であった。
 被験者は、テストステロン(75mg)またはプラセボを3年間投与する群に無作為に割り付けられた。投与量は、テストステロン値が500~900ng/dLとなるように調節された。
 主要評価項目は、アテローム性動脈硬化の指標である総頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)と冠動脈石灰化(CAC)スコアの複合アウトカムとし、副次評価項目は性機能、健康関連QOLなどであった。
 2004年9月~09年2月に、米国の3施設に308例が登録され、テストステロン群に156例、プラセボ群には152例が登録された。
IMT、CACスコアに変化なし、性機能、QOLは改善せず
 患者背景は両群で類似しており、全体の平均年齢は67.6歳、高血圧が42%、糖尿病が15%、冠動脈疾患が15%、肥満が27%に認められ、43%がスタチンの投与を受けていた。平均総テストステロン値は、テストステロン群が307.2±64.3ng/dL、プラセボ群は307.4±67.4ng/dLだった。
 IMTの変化率は、テストステロン群が0.012mm/年、プラセボ群は0.010mm/年で、年齢と施設で補正後の平均差は0.0002mm/年(95%信頼区間[CI]:-0.003~0.003、p=0.89)であり、両群間に有意な差を認めなかった。
 また、CACスコアの変化率は、テストステロン群が31.4 Agatston単位/年、プラセボ群は41.4 Agatston単位/年で、補正後の平均差は-10.8 Agatston単位/年(95%CI:-45.7~24.2、p=0.54)であり、両群間に有意差はみられなかった。テストステロン群のテストステロン値の変化は、IMTや石灰化スコアの変化と相関しなかった。
 両群間に、性欲(p=0.13)、勃起機能(p=0.10)、総性機能スコア(p=0.09)の差は認めなかった。また、身体機能や健康関連QOLにも有意な差はなかった。
 総コレステロール(TC)、HDL-C、LDL-C、トリグリセライド、空腹時血糖値は両群間に差はみられず、国際前立腺症状スコア(IPSS)も同等であったが、ヘマトクリット(p<0.001)、ヘモグロビン(p<0.001)、前立腺特異抗原(PSA)(p=0.01)はテストステロン群で有意に高値であった。
 著者は、「本試験の検出力はアテローム性動脈硬化の進展に限られ、心血管イベントを評価するものではないため、これらの知見は心血管におけるテストステロンの安全性を示すものではないことに留意すべき」と指摘している。