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私がいつも疑問に思っているのは、「経済政策や金融政策はいったい誰のために存在するのか」ということです。すべての人々や企業に平等に恩恵をもたらすユートピア的な経済政策や金融政策などは存在しないという現実を、私も承知しているつもりです。
とはいえ、それにしてもアメリカの大型減税策や日本のアベノミクス、主要国の中央銀行のインフレ目標政策などは、富裕層や大企業などごく一部に恩恵を集中させる政策のため、普通に暮らす大多数の人々の立場から見ると、あまりにも希望が持てないものばかりです。経済の本質や歴史について先入観を持たずにしっかりと検証していれば、このような格差を助長する経済政策や金融政策を行うはずがなかったのです。
私の先の疑問に対する答えはもちろん、普通の暮らしをしている人々のために存在しているということです。マクロ経済学を確立させたJ.Mケインズの師匠でもあった、ケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャル教授は学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす人々の様子を見せながら、「経済学者になるには冷徹な頭脳と温かい心の両方が必要である」と教え諭したといわれています。アメリカの主流派の経済学者たちや、彼らを支持する欧州や日本の経済学者たちには、ぜひともマーシャル教授と同じ志を持ってほしいと思っています。
そのうえで、なぜアメリカで貧困や格差が深刻化しているのか、なぜトランプ大統領が誕生するまでになったのか、そういった現実をしっかりと直視しながら、普通の人々の生活を苦しめる経済金融政策を改めなければならないという考えに行き着いてほしいのです。
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