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せん妄に対するハロペリドール±ロラゼパムのランダム化比較試験
【本論文に着目した理由】
せん妄管理の基本は,早期スクリーニングによる誘因の除去と環境整備などの非薬物的治療であるが,特に終末期がん患者では不可逆性のせん妄がしばしば発症する
ハロペリドールおよびリスペリドンが,プラセボに対して優位性を示せなかった研究(JAMA Intern Med 177:34)以降,適切な薬物治療のあり方が注目されている
単独ではせん妄の増悪因子とされるベンゾジアゼピン系薬が,ハロペリドールと併用することにより少なくともせん妄を悪化させなかったことは臨床的に意義がある
【著者および私の見解】
興奮が強いせん妄患者に対して,ベンゾジアゼピン系薬をハロペリドールと併用することによって陽性症状の軽減が期待できる
RASSスコアが低いことは,より安定した鎮静が得られていることを意味し,必ずしもせん妄を改善させているとは限らないことに注意を要する
本研究では,せん妄の陽性症状の制御と,より深い鎮静(RASSスコア<-2)とがトレードオフの関係にあることが示唆された
日本ではロラゼパムの注射剤が使用できないため,代替となるベンゾジアゼピン系薬を慎重に選択する必要がある
【私の結論】
せん妄に対してハロペリドール+ベンゾジアゼピン系薬による治療を行うにあたっては,陽性症状が軽減するとともに鎮静によりコミュニケーションが取りにくくなる可能性について家族と話し合うべきである
せん妄の治療はどのような状態をゴールとすべきなのかについて,患者自身や家族の意向も含めた研究が必要である
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