スクリーン時間、運動、睡眠の3項目について推奨基準を満たしている小児では認知機能が向上

スマホやテレビなどを見る時間である「スクリーン時間」※が1日あたり2時間以内、あるいは余暇のスクリーン時間、運動、睡眠の3項目について推奨基準を満たしている小児では認知機能が向上していたと、カナダ・Children’s Hospital of Eastern OntarioのJeremy J. Walsh氏らがLancet Child Adolesc Health(2018年9月26日オンライン版)で報告した。
※ゲームやネットサーフィンなどでテレビ、タブレット端末、コンピュータ、スマートフォンの画面を見ている時間
3項目とも満たす米国小児は20人に1人
 2016年に作成された「カナダ・子供と若者のための24時間行動ガイドライン」(対象年齢5~17歳)では、1日当たり①中等度~強度の運動60分以上②余暇のスクリーン時間2時間以内③睡眠時間を5~13歳では9~11時間、14~17歳では8~10時間―の実践を推奨している。
 Walsh氏らは10年間の縦断的観察研究Adolescent Brain Cognitive Development studyのデータを用いて、これら3項目へのアドヒアランスと認知機能との関連を調べた。
 対象は2016~17年に米国内21カ所で同研究に参加した8~11歳の米国人4,524児。子供と両親は研究開始時に運動、睡眠、スクリーン時間を評価するためのアンケートに回答。さらに子供は言語能力、エピソード記憶、遂行機能、注意力、作業記憶および処理速度を評価する認知機能テストを受けた。
 主要評価項目は認知機能とし、多変量線形混合効果モデルを用いて、睡眠、スクリーン時間、運動との関連を分析した。
 完全なデータを入手できた4,520児のうち睡眠の推奨基準を満たしていた割合は51%、スクリーン時間は37%、運動は18%。3項目全ての推奨基準を満たしたのはわずか5%。平均スクリーン時間は3.6時間だった。
 認知機能は、推奨基準を1項目も満たさなかった群と比べ、3項目全てを満たした群(β=3.89、95%CI 1.43~6.34、P=0.0019)、スクリーン時間のみを満たした群(同4.25、2.50~6.01、P<0.0001)、スクリーン時間と睡眠を満たした群(同5.15、3.56~6.74、P<0.0001)で高かった。
スクリーン時間2時間以上で認知機能発達が阻害
 今回の研究結果から、小児の認知機能発達において同ガイドラインの推奨項目を遵守することが重要であり、特にスクリーン時間を制限し、健康的な睡眠を促進することが認知機能の向上に最も強く関連することが分かった。
 また、スクリーン時間が2時間を超えると認知機能の発達が阻害されることも示唆された。Walsh氏らは「視聴方法、視聴内容が教育的かエンターテイメントか、集中を要するかマルチタスクを伴うかなど、さらに多くの研究が必要」としている。
 なお、運動基準単独と認知機能に関連は認められなかったが、運動は依然として身体の健康アウトカムに対する最も重要な因子であり、同氏らは「適度な運動が認知機能にネガティブな影響を与えるわけではない」と指摘している。